「国債は無期限に償還しなくともよい」主張の是非は?
まず、基本的なことから指摘すれば、発行される国債を直接日銀が購入することは「財政ファイナンス」として、財政法で禁じている。これは、世界のほとんどの国も同様だ。
したがって、日銀が国債を購入するとしても、一度は必ず国債市場を通過することになる。現在のように、国債金利が上昇しないのは、日銀の低金利政策によるものだ。そのため、国債発行額が増加し、市場原理が正常に機能していれば、金利は上昇する。
果たして、財政積極化による国債増発を続ける中で、いつまでも市場原理の働かない国債市場を放置し、金利の上昇を抑え込んでおくことができるのだろうか。
また、国債の償還にあたって、借換債を発行して先延ばしすることは、現在でも行われている。しかし、これにはルールがあり、国債は60年で償還しなければならない。10年国債であれば、借換債の発行は最大5回までということになる。
したがって、「無期限に償還しなくともよい」という主張は間違っている。無期限に償還しなくて済むようにするためには、ルールを変更しなければならない。
この問題に関連して、積極派からは、
「借換債の発行ができるため、先進国のほとんどは予算に国債の償還費は計上しておらず、国債の利払い費だけを計上している。日本は国債費に償還費と利払い費を計上している。借換債の発行により償還を先延ばしするのだから、他の先進国と同様に利払い費だけを計上すればいい」
との指摘もある。
この考え方には一理ある。だが、国債を増発すれば、必然的に利払い費は増加していく。借換債を利用しても、60年ルールがある以上は国債の償還は到来する。また、その間に無制限に国債を増発すれば、償還費と利払い費が増大していくことは間違えない。
つまり、予算に計上するか、しないかは表面的な問題であり、潜在的に国債の償還費と利払い費が増加することに変わりはない。
そこで、積極派から出てくる切り札が、
「紙幣を増刷することで国債の償還費や利払い費を賄えばよい」
とする考え方だ。
さて、では、MMT理論は本当に実践可能なものなのだろうか。これについては次回、検証していこう。