ソニーグループが電気自動車(EV)に参入する。吉田憲一郎社長が2022年1月4日、世界最大級の家電IT見本市「CES」(米ラスベガス)の開幕に合わせて、新会社「ソニーモビリティ株式会社」を今春に設立し、量産化を検討すると発表した。
EVは「脱炭素」の流れが強まるなか、ガソリン車に比べて技術的な障壁が低い。アップルの参入もウワサされており、IT企業など異業種を交えたEVの競争環境は激変しそうだ。
ソニーEV、半導体とエンタメが強み
ソニーの参入は既定路線と見る向きが多い。ちょうど2年前、2020年1月のCESでEVの試作車「VISION―S」(4人乗りセダン)を披露していた。この時、「自社のセンサー技術や音響設備をアピールするために製作した」と説明されたが、一定の自動運転が可能なことも公表され、一般道の試験走行を2020年12月のオーストリアを皮切りに欧州で始めていた。
今回は新たにスポーツタイプ多目的車(SUV)の試作車もお披露目し、吉田社長は
「EVの市場投入を本格的に検討していく。AI(人工知能)やロボティクス技術を最大限に活用し、モビリティー(移動)の可能性をさらに追求する」
と宣言した。
試作車には、ソニーが得意とする車載用センサー計約40個を搭載し、周辺の環境を詳細に把握するとともに、自動運転を見据えて高速通信規格「5G」を採用。さらに、臨場感のある音楽や映像を楽しめるなどエンターテインメント機能の高さも特徴にしている。
自動車の家電化という予測は、21世紀初頭からさまざまに語られてきたが、EVがそれを現実化しつつある。エンジンという複雑で、高い安全性と環境への負荷の軽減を求められる装置がいらないEVは、部品数もガソリン車の半分ほどに減り、新規参入の壁が格段に低い。
新興の米テスラが一躍販売台数で先行、これをGMと中国メーカーの合弁企業「上汽通用五菱汽車(SGMW)」が50万円を切る格安EVで追い上げ、中国の比亜迪(BYD)、独フォルクスワーゲン(VW)など従来からの自動車大手が続く構図。この争いに異業種も続々名乗りを上げている。