「赤字のリストラ」と「黒字の未来型投資」の違いは
ただし、面白いことに、5社のうち新型コロナが経営を直撃した観光業のKNT-CTホールディングスをのぞく4社は、いずれも募集直近の通期決算が黒字だった。経営に「余力」があるうちに人員を再配置する「構造改革」を進めようというわけだ。
日本たばこ産業では、国内たばこ事業などの46歳以上の社員を中心に1000人規模の希望退職者を募集、パート従業員1600人を含めると、たばこ事業の約2割を削減する計画だ。ホンダも55歳以上を対象に募集すると、国内正社員の約5%にあたる2000人超が応募した。
2021年に「早期・希望退職」を行った企業は、「赤字企業による小・中規模募集」と、「黒字企業による大型・先行型の募集」の二極化が進んでいるという。
2021年に募集した84社のうち、半数以上の47社(56.0%)は直近本決算で赤字を計上したが、黒字決算は44.6%で、全体的に人数が多い傾向にある。この「二極化」がコロナ禍で加速した格好となった。
そのうえ、オミクロン株の感染急拡大によって、先行きがさらに不透明になっている。
コロナ禍で業績不振が長引く企業を中心に、拠点や事業所、部門の廃止など、事業見直しを迫られた小規模実施が後を絶たない。今年(2022年)に入ってからも、すでに1月19日段階で9社の募集実施が判明している。パチンコの大手メーカー平和(約250人)、福島県いわき市で温泉施設を営む常磐興産(約50人)などだ。
東京商工リサーチでは、
「製造業を中心に、先行きが不透明なコロナ禍にあっても社員の『年齢構成是正』や、デジタル分野の強化などの流れは続いている。国内の早期・希望退職は2022年も黒字企業による大型募集、コロナ直撃による小・中規模募集の二極化は継続するとみられる。募集企業数は2021年と同等か、それを上回る可能性も現実味を帯びている」
と分析している。
なお、調査は早期・希望退職者募集の実施を開示し、具体的な内容を確認できた上場企業を対象とした。実施期間が2021年1月1日以降、あるいは応募社員の退職日が2021年12月末までの募集とした。
(福田和郎)