オミクロン株の感染大爆発が止まらない。
2022年1月21日から「まん延防止等重点措置」が東京都など1都12県に発令され、先行する広島など3県と合わせて計16都県が対象になる。
大阪府など関西3府県も21日に「まん延防止」適用を政府に要請する方針だ。いったい、日本経済はどうなるのか。シンクタンクの分析を読み解くと――。
わずか3週間でGDPの0.2%を押し下げる
野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏は「まん延防止措置は16都県にまで拡大:経済損失は合計で1.1兆円に」(1月19日付)のなかで、先行して適用された広島、山口、沖縄3県の経済規模(県民所得)が日本全体の4.0%しかないのに対し、新たに加わる13都県は計54.7%もあり、日本全体の半分を超えると指摘した。
「3週間程度(24日間)での経済損失は1兆650億円になる計算だ。既に実施されている3県での同措置の経済損失(540億円)と合計すると、1兆1200億円となる。これは、1年間の名目GDP(国内総生産)の0.19%に相当する規模であり、失業者を4.4万人増加させる効果を持つ。3県での経済損失規模と比べて、一気に19.6倍に膨れ上がる」
そんな懸念のなか、「まん延防止等重点措置」を適用する地域はさらに拡大しそうだ。そうなると、昨年(2021年)秋に、感染リスクの一時低下で持ち直しのきっかけをつかんだ日本経済は再び打撃を受け、再び足踏み局面へと陥っていくことになる。
女性の「真の失業率」がさらに悪化する
一方、第一生命経済研究所の首席エコノミスト永濱利廣氏のレポート「『まん延防止』拡大で悪化する雇用環境~16都県3週間発出で+0.7万人の失業増。失業率ではわからない女性雇用悪化~」(1月18日付)では、GDPへのマイナス影響は1523億円程度と、木内氏の試算より一桁低かった。
これは、「まん延防止等重点措置」がコロナ4段階ステージ指標の「ステージ3」での発出となるため、昨年何度も出された「緊急事態宣言」ほどの経済活動抑制圧力にはならないだろう、とみるからだった。
しかし、永濱利廣氏は雇用環境の悪化、とくに女性の「隠れた失業率」の増大に懸念を示す。失業者の増加規模は7000人程度と試算しているが、失業率の男女差に注目する。
「昨年(2021年)7~9月期時点で完全失業率は、男性3.1%に対して女性が2.5%と、女性のほうが雇用環境は改善しているように見える。しかし、就業していてももっと働きたいと考えている人や、非労働力人口の中でも働きたいと考えている人も存在する」「(そうした人達もカウントした)未活用労働指標LU4を見ると、昨年7~9月期時点で男性が5.9%にとどまっているのに対して、女性が7.9%の水準にある」
「未活用労働者」にあてはまるのは、単純に失業している人だけではない。たとえば、すでに働いているけれど「もっと働きたい」と考えている人や、仕事につきたいと思っているのに、いろいろな事情があって、現在は仕事を探していない人などがこれにあたる。なお、「真の失業率」の実態を正確に把握するために、2018年から導入されたのが「未活用労働指標」だ。
永濱利廣氏は、その未活用労働指標が「第5波」のピークだった昨年7~9月期時点で、女性のほうが男性より2ポイント高かったことに注目したのだった=図表参照。そして、こう結んでいる。
「この理由としては、非労働力人口の中でも働きたいと考えていても、就業環境の厳しさや感染を恐れて求職活動していない人たちが失業者としてカウントされていないこと加えて、女性の割合が高い非正規労働者を中心にもっと働きたいと考えている人が多数存在すること等が推察される。景気がよくないわりに失業率が低く抑えられているからといって、楽観視できないということは未活用労働指標からも明らか」
今後さらに「まん延防止」の地域や期間を拡大するようであれば、政府は雇用環境悪化の直撃を受けやすい女性を中心に、予備費を有効に活用した柔軟で迅速な政策対応が求められる。
(福田和郎)