男性の育児休暇の取得で「不安」に思うことの第1位は、男女ともに「収入」だったことが、転職サービス「doda」などを提供するパーソルキャリア(東京都千代田区)の調べでわかった。男性育休に関する意識調査(第2弾)を、2022年1月18日に発表した。
「配偶者(夫)の収入が減るかもしれない」と答えた女性は48.8%、「収入が減るかもしれない」と答えた男性は40.9%だった。
さらに育児休暇の取得期間について、管理職は3日以内の取得ならば8割以上が賛成したが、4か月以上の取得には半数が反対した。
夫の昇進・昇級に響く......
調査では、男性の育児休暇の取得希望を聞いたところ、68.9%の女性が、将来、配偶者(夫)に育休を「取得してほしい」(「必ず取得してほしい」(16.1%)と「できれば取得してほしい」(52.8%)の合計)と答えたのに対して、80.0%の男性が将来育休を「取得したい」(「必ず取得したい」(27.6%)と「できれば取得したい」(52.4%)の合計)と答えた。男女で、10ポイント以上の差があった。
女性の6.7%が「できれば取得してほしくない」、男性の6.3%「できれば取得したくない」と回答。女性の4.1%が「絶対取得してほしくない」、男性の0.3%が「絶対取得したくない」、「わからない/あてはまらない」と答えた女性は20.3%、男性が13.4%だった。、
また、将来の男性育休の取得について心配なことを聞いたところ、男女ともに最も不安なことは「収入が減るかもしれない」ことで、ともに4割を超えた。次いで、男女ともに「(配偶者の)上司/部下/同僚など、勤務先に迷惑をかけるかもしれない」で、そう答えた女性は35.6%、男性が38.0%だった。
3位は、女性が「配偶者(夫)の昇給が難しくなる/遅れるかもしれない」の34.1%、男性が「勤務先での評判が悪くなるかもしれない」の27.2%。4位は、女性が「配偶者(夫)の昇進が難しくなる/遅れるかもしれない」の29.4%、男性が「昇給が難しくなる/遅れるかもしれない」で27.0%。5位は、女性が「思ったよりも育児をしてもらえないかもしれない」の28.8%、男性が「昇進が難しくなる/遅れるかもしれない」の25.0%と続いた=下の表(1)(2)参照。
管理職は「男性の育休所得」に負担を感じている
さらに、調査では管理職と同僚に「あなたの部下(同僚)の男性が育児休暇を取得することについて、どう思いますか」と聞いたところ、8割を超える人が「賛成」(「業務は調整したり、自分を含めた他のメンバーで負担したりするので、『積極的に取得すべきである』」と「業務の調整や他のメンバー/自分の負担について気になるものの、『どちらかというと取得には賛成である』」と答えた人の合計)しているものの、子どものいる20代~50代の男性(学生を除く)で育休を取得したことがある人は15.4%にとどまった。
くわえて、管理職、同僚ともに取得期間が長くなるにつれ、賛成の割合が減っていき、両者を比べると、管理職のほうがその傾向が強いことがわかる。
3日以内の取得では、管理職、同僚ともに85%以上が「賛成」している一方で、4か月以上の取得になると、管理職は約半数が「反対」と回答。同僚の約40%が「反対」と答えている。管理職は、実際に業務の分担や管理をする立場にいるからこそ、同僚以上に男性社員の育休取得を負担に感じていると考えられる=下のグラフ参照。
パーソルキャリア株式会社 執行役員・転職メディア事業部の事業部長、喜多恭子(きだ・きょうこ)さんは、
「今回の調査では、男女間で将来の男性育休の取得希期間に差があること、大多数の管理職、同僚が男性育休の取得に賛成しており、実態とのギャップが明らかになりました。周囲の賛成の声に反して、実際の取得率が低い傾向にあるのには、二つの可能性が考えられます。
一つは、企業の風土改革、働き方改革の遅れが男性育休を取得しにくい職場環境を作ってしまっている可能性です。男性社員が育休を取得する際の、業務の再検討や再配分などを負担に感じている管理職も存在し、それが取得のしにくさに影響している可能性が考えられます。
もう一つは、収入減への対策が進んでいないことです。この調査では、職場の環境面以上に『収入』をネックに感じている人が多くいることがわかりました。実際に、『生活費や住宅ローンの支払いなど金銭面のことを考え、育休取得はあきらめざるを得なかった』という男性の声が多く聞かれます。環境の整備に加え、経済的に安心して育休が取れる環境を整えることも求められているようです」
とみている。
なお、調査は2021年10月9日~11日に実施。20~59歳の学生以外の男女1675人(女性は、現在妊娠中または将来子どもがほしいと答えた学生以外の20代~50代。男性は、配偶者が現在妊娠中または将来子どもがほしいと答えた学生以外の20代~50代)が対象。