コロナ禍で何が変わったのか? 先進的な人材育成システムが企業価値を左右する時代 寺田佳子さんに聞く(後編)

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   コロナ禍で、「できるヒト」のイメージが変わりつつあります。これからの企業で活躍するのは、どのような人材なのか? 企業はどのようにして、期待する人材を育成すればよいのか?
    これからの「できるヒト」を育てるための学びの手法を、日本イーラーニングコンソシアム理事でインストラクショナルデザイナーの寺田佳子(てらだ・よしこ)さんに聞きました。

社員研修は「自ら学ぶ環境」を整える時代

   【新連載】コロナ禍で何が変わったのか? 求められるのは「社会の変化にスピーディに対応できる」学びの環境 寺田佳子さんに聞く(前編)>の続きです。

――前回、社員研修の担当者の仕事は、社員に『教える』ことから、社員が『自ら学ぶ環境』を整えることにシフトするというお話がありました。それは世界的な潮流なのですか?

寺田佳子さん「そうですね。私自身も驚いたのですが、海外の人材育成関連の学会に参加したときに、大学関係者や企業の人事・人材育成担当者の他に、経営コンサルタントや投資家たちに出会うことがありました。何のために参加しているのか不思議に思って声をかけたところ、『もっともROI(投資対効果)の高い企業をいち早く見つけるためさ』というではありませんか。『はぁ?』と怪訝な顔をすると、こんな説明をしてくれました。
投資家にとって最も安全で有利な選択は、将来に渡って成長を続ける可能性、つまり持続可能性の高い企業を見つけて投資することです。たとえば、優れた製品やサービスを開発して世間の注目を集める企業はどうでしょうか。新製品の賞味期限が短く、より安価な類似製品が次々とマーケットに出てくるご時世です。大きな投資対効果が期待できるかといえば、首を傾げざるをえないでしょう。
では、優れた製品やサービスを創る人がいる企業はどうでしょうか。入社3年以内の離職率が3割を超える時代です。優れたものを創ることができる有望なクリエーターには、夢のようなオファーが殺到し、より条件のいい企業に転職することは、しごく日常的な現象です。ですから、今いる人材を当てにした投資が将来の成長を約束するかというと、やはり不安が大きいと言わざるを得ないわけです」

――なるほど、ではいったい何を基準に投資先を見つけるのですか?

寺田さん「そこなんです。優れた製品やサービスを創ることができる人材を『育てる仕組み』持っているかどうか、で判断するというのですね。つまり、その企業が持っている人材育成の環境とノウハウ、ハードとソフトの両面を兼ね備えた仕組みですね。そのシステムがしっかり構築されていて、企業の文化として根づいていれば、世の中の変化に応じて、スピーディに才能ある人材を育てることができるというわけです。こんなに確かで、将来性のある、投資の基準はないので、いろんな企業の人事部の発表をチェックしては詳細に分析しているというのです。言いかえれば、企業の人材育成システムが企業の未来の価値を決めている、とも言えるのです。
実際に、先進的な取り組みをしている企業では、研修教育だけではなく、パフォーマンス・サポート・システム(業務支援システム)やナレッジ・マネジメント・システム、タレント・マネジメントやエキスパート・システム(専門家や経験者と初心者をネットワークで結び、日常的に支援する仕組み)などを有機的に組み合わせた、統合的な人材育成システムを構築しています。また、常に新しいことを学び、新しいことに挑戦する、という文化も醸成されていますね」
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