政策担当の日銀事務方は「利上げを目指す」
金融緩和策の維持が限界に近づいていることは確かなので、エコノミストたちもロイター報道の真偽を分析した。野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏は、「市場に大きな影響を与えた日銀利上げ検討の報道」(1月14日付)のなかで、「日本銀行が利上げ(マイナス金利解除)を決定する可能性はゼロに近い」としながらも、こうした報道に金融市場が大きく反応するのも無理がない背景があるとして、こう説明した。
「日本でも、来年度には消費者物価(除く生鮮食品)が1%を超える可能性が高まっていること、米国で利上げが前倒しに実施されるとの観測が強まる中、日本銀行が政策の現状維持を続ければ、日米金利差の拡大で円安が進み、それが悪い物価上昇を通じて国民生活を圧迫するとの批判が高まるとの見通しであること、などが背景にあるのではないか」
そして、日銀内部の対立の構図をこう推測したのだった。
「黒田総裁が2023年4月に退任した後には、日本銀行が利上げを含む正常化策を明示的に進める可能性は十分に出てくるだろう。金融政策姿勢を巡る日本銀行内部での構図は、任期終了まで現状維持を続けたい黒田総裁、追加緩和を主張するリフレ派、正常化を視野に入れる日銀事務方、の三つ巴ではないか。それぞれが拮抗しているため、結果的に政策は現状維持となりやすい」
日銀の政策担当者が集まる事務方が「利上げの準備を進めているのでは」というわけだ。
木内氏と同様に、三井住友DSアセットマネジメントのチーフマーケットストラテジスト市川雅浩氏も、日銀内部で「利上げの準備を進めている可能性があるのでは」という見方だ。
市川氏のレポート「日銀が利上げを議論との観測が浮上」(1月17日付)の中で、日銀が前もって金融政策の先行きについて示す指針「フォワードガイダンス」の文言を修正すれば、理論的には2%の物価目標を達成しなくても利下げを行うことは可能だ、としている=図表参照。
ただし、黒田総裁の任期満了前に「大幅に修正される公算は小さい」。それだけに、黒田総裁の記者会見での物価の見通しや金融政策の方向性に関する発言に注目が集まる、としていた。