企業は「オミクロン株の不安は大きいが、デルタ株に比べると冷静」
――調査を行ったのは、昨年末から今年の仕事始めの時期です。オミクロン株はその後、さらに爆発的に拡大しています。企業の業績への懸念は今後、どうなるでしょうか。
池田直紀さん「誰もこんなに増えると思っていませんでしたから、さらに厳しくなると予想されます。旅館、ホテルといった対面サービスの業界を中心に『せっかく客足が戻ってきたのに、キャンセルが続出している。業績回復の腰を折られた』という声が多いです。
ただ、新型コロナが入ってきた初期の頃に比べ、オミクロン株に関して不安は大きいのですが、デルタ株に比べると、冷静というか、企業の反応がこれまでとは違うように感じます」
――どういうことですか。
池田さん「まだ、不確定要素がありますが、重症化率が低い点があげられます。『第5波』のピークの時には、自宅療養の患者さんがたくさん亡くなる事態が起こりました。企業の中には『その当時に比べれば影響が少ない。いずれ弱毒性になり、コロナと共生していけるのではないか』という意見もありました。
面白いことに、こうした冷静な見方は、『第5波』のピークだった昨年(2021年)8月~9月にもありました。東京五輪・パラリンピックが無観客で開催され、人の流れが止まり、新規感染者が最高だったにもかかわらず、『マイナスの業績』を懸念する割合が8月~9月に減少に転じたのです。
おそらく、ピークの割には思ったより感染者が増えていない、テレワークなどの効果があったのだと、企業側も慣れてきたのです。また、感染拡大の不安より、『人の流れが戻ってくる』という経済活動再開の期待のほうが高まったためとみられます」
――今回も、過度には警戒していない、ということですか。
池田さん「欧米をみると、毎日数十万人規模の新規感染者を出しているのに、経済活動を規制していない国が多いです。日本国内だけ規制してどうするのだ、という意見もありました。
ただ、これから春になって人出が増え、さらに感染が拡大する恐れがあります。企業の間では、政府は感染症の専門家の意見をよく聞いて、過度に大騒ぎをせずに、冷静に感染対策と経済活動再開のバランスをとってほしいという意見が多い気がします」
――ただ、東京都が、新型コロナの入院率が20%以上になったら、まん延防止等措置の適用を要請する、という新基準を作りました。基準を突破する勢いで感染が急拡大して、今週中にも、東京など首都圏にまん延防止等措置が発令されるようですね。
池田さん「東京都は日本経済の中心です。まん延防止等措置が東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏に適用されれば、また経済が止まってしまいます。それがいま、最大の懸念要因です」
調査は2021年12月16日~2022年1月5日、全国2万3826社に対して行い、有効1万769社(有効回答率45.2%)から回答を得た。
(福田和郎)