コロナ禍でリモートワークが増えているなか、ヤフーでは国内の従業員は国内ならどこに住んでもOKで、月15万円まで飛行機通勤も認めると発表(2022年1月12日)し、ニュースになった。
「うらやましいな」と思った人に参考になりそうな本がある。「コロナ移住のすすめ」(毎日新聞出版)だ。「好きな場所で、好きな仕事をする人生」を送る移住者が多数、紹介されている。
「コロナ移住のすすめ」(藻谷ゆかり著)毎日新聞出版
著者は藻谷ゆかりさん。東京大学経済学部卒業後、金融機関に勤務。ハーバードビジネススクールでMBA取得。外資系企業勤務を経て起業し、2002年にはオフィスを長野県に移転、2018年に事業譲渡した。現在は地方移住、企業などについて講演、執筆をしている。
「存在欲求」を大切にする価値観
また、夫は国際エコノミストの藻谷俊介さんで、夫婦で経済調査会社を共同経営している。夫の俊介さんはふだん長野県の自宅で仕事をして、用事があれば東京のオフィスへ行く。移住歴は18年を超えるが、ずっとテレワークで仕事をしてきたという。
そんな移住の経験者が自らの体験と、多くの移住者の話をまとめたのがこの本だ。内容も、地に足がついている。趣味が高じて、田舎に移住したというような話は出てこない。
最近の地方移住の背景には
(1)メンバーシップ型からジョブ型へ
(2)専業から複業へ
(3)所有欲求から存在欲求へ
という3つのパラダイムシフトが起きているという。
説明しておくと、ジョブ型――つまりジョブ型雇用とは、職務に応じて、適切な人材を雇用する考え方。本書では「スペシャリストとして行うジョブの対価として、報酬を受け取るフリーランス」、もしくは「スモールビジネスの経営者」を指している。
だから、企業の従業員は対象ではない。「複業」であり、「副業」でないのも重要だ。「いくつかのジョブを掛け持ちして生計を立てていく」から、どの仕事も本業なのだ。
また、地方移住者には、モノを所有して豊かさを感じる「所有欲求」よりも、人間としての存在を期待される「存在欲求」を大切にする価値観があるという。