企業の後継者難による倒産が止まらない。
東京商工リサーチによると、2021年(1~12月)の「後継者難」の倒産は、前年比2.4%増の381件だった。
2年連続で前年を上回り、調査を開始した2013年以降で最多件数を更新した。22年1月13日の発表。
ちなみに、全国の企業倒産件数(負債総額1000万円以上)は6030件で、前年比22.4%減だった。「後継者難」による倒産は、全体の6.3%を占めている=下図参照。
倒産要因は代表者の「死亡」と「体調不良」で8割
調査によると、後継者難による倒産の要因は、代表者などの「死亡」が196件(前年比19.5%増、前年164件)で、2年連続で前年を上回った。14年の175件を超え、最多を記録した。
「後継者難」倒産に占める「死亡」の構成比は、51.4%だ。前年(44.0%)より7.4ポイント上昇。18年(51.6%)以来、3年ぶりに50%台になった。一方の「体調不良」は121件(前年比9.0%減、構成比31.7%)で、こちらは2年ぶりに減少した。
したがって、代表者などの「死亡」と「体調不良」は合わせて317件(前年比6.7%増、前年297件)で、初めて300件を超えた、ということだ。
この2つの要因で「後継者難」倒産の構成比は、83.2%だ。前年の79.8%より3.4ポイントも上昇した。なお、次いで多かった「高齢」による倒産は、41件(前年比2.5%増、構成比10.7%)で、3年連続で前年を上回った。
代表者の高齢化は進んでいる。平均年齢は62.49歳(前年62.16歳)に上昇した。多くの中小企業では、代表者が経営全般を担っているが、業績低迷が続く企業では後継者の育成などは後回しになっているケースが少なくない。
そうしたなか、代表者に不測の事態が起きた場合、事業継続に支障が出るリスクも高く、事業承継は重大な経営課題になっている。
「後継者難」倒産について、産業別でみると、10産業のうち、増加が5産業、減少は5産業だった。
まず、「後継者難」倒産が増えた産業について。最多は「サービス業他」の84件(前年比10.5%増、構成比22.0%)で、2016年以降6年連続で前年を上回った。
続いて、広告業(ゼロ→6件)、建築・設計業(1→5件)を含む学術研究、専門・技術サービス業が17件(前年8件)、美容業(2→4件)、旅行業(1→3件)を含む生活関連サービス業や娯楽業が11件(前年6件)で前年を上回った。
そのほか、製造業は66件(前年比10.0%増、前年60件)が2年連続、不動産業25件(92.3%増、13件)が2年ぶり、情報通信業11件(22.2%増、9件)が3年ぶりに、それぞれ増加した。金融・保険業は1件(前年ゼロ)で、2年ぶりに発生した。
なお、増加率が最も大きい不動産業は、不動産代理業・仲介業(4→9件)、貸事務所業(2→6件)、建物売買業(1→4件)、土地売買業(1→4件)で増えた。
一方、「後継者難」倒産が減った産業について。こちらは、建設業77件(前年比10.4%減、前年86件)、卸売業64件(1.5%減、65件)、運輸業13件(7.1%減、14件)が2年ぶり、農・林・漁・鉱業2件(71.4%減、7件)、小売業38件(9.5%減、42件)が3年ぶりに、それぞれ減少した。