【2022年の不動産・住宅市況】中古住宅&賃貸住宅はどうなる? 住宅ローン減税見直し、続くコロナ禍の影響は?(中山登志朗)

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賃料推移は、どの圏域も安定推移。需要堅調の証

   賃貸市場の賃料推移――とくに三大都市圏の賃料推移は、コロナ禍においても大きく変わっておらず、おおむね安定推移しています。

   圏域によって多少の違いはあるものの、首都圏では都心および近郊を中心に、一時的にやや下げた後持ち直しています。近畿圏では安定上昇、中部圏ではいったん2020年春にピークがあって以降はわずかに弱含みという結果でした。

   これはコロナ禍においても、他の地域から流入してくる人口があることが大きなポイントです。首都圏――とくに東京都および東京23区では、他地域からの流入が赤字(転出超過)となる状況が発生しています。もっとも、毎年春には、入学・就職によってまとまった転入超過が発生しているため、年間を通してみると黒字(転入超過)となります。

   首都圏では周辺3県への転入超過はコロナ以前から継続しているため、コロナ禍で人口が減少するのではないか、との憂慮はあたらないといえるでしょう。

   なお、同様に近畿圏では、大阪府も大阪市も転入超過が継続しています。中部圏では愛知県からの転出は多いものの、名古屋市への転入が続いているため、人口が全体として減少するような事態には至っていません。

   以上のように、コロナ禍においても依然として、都市圏への人口流入は一定数発生し続けていることが、大都市圏での賃料動向をより安定させていると見ることができます。

   このような賃貸住宅に対する機関投資家の需要、および賃料相場の安定を背景に、賃貸住宅の着工戸数も徐々に増加しています。

   2018年9月から2021年2月までは月次ベースでは前年同月比マイナスでした。ところが、2021年3月以降は、最新統計公表月である11月まで9ヵ月連続でプラスに転じています。

   賃料水準の安定推移を背景として、今後も賃貸住宅、特に賃貸マンションの着工戸数は2022年も増加していくものと考えられます。

   コロナ禍にあっても需要堅調との判断によって、2022年の賃貸市場は安定的な拡大が期待できるのではないか、と見ています。

(中山登志朗)

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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