傾聴力がジビアに問われるオンラインのマネジメント 「反応の意識化」《前編》(前川孝雄)

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   リモートワーク下での「支援型マネジメント」の第3のポイントは、「反応の意識化」です。

   オンラインでの打ち合わせや会議では、上司・部下ともに、相手の表情や反応が読み取りにくい状態にあります。「相手は、自分の話をどの程度集中して聴いているか」「果たして、話は通じているのか」「相手の話の受け止め方は肯定的なのか、懐疑的なのか」など様子を捉えにくく、互いに不安になりがちです。

  • 上司は一方的に「話過ぎない」こと(写真はイメージ)
    上司は一方的に「話過ぎない」こと(写真はイメージ)
  • 上司は一方的に「話過ぎない」こと(写真はイメージ)

一方的な「話しすぎ」のリスク

   そこで上司が陥りやすいのが、「話しすぎ」です。対面のコミュニケーションですら、部下との1対1の面談や打ち合わせで、相手があまり語らず沈黙が続くと、上司が耐え切れず、一方的に語る場面が見受けられます。

   オンラインでは、相手の反応がさらに見えづらいことから、「とりあえず、まず言うべきことはすべて伝えておこう」となりがちです。

   しかし、部下は上司の話の途中で疑問や質問を挟むわけにもいきません。一方的な話に集中力も欠いて、次第に頭にも入りづらくなります。

   上司は、部下のさえない表情や反応にも鈍感で気づかないままだと、独演会になっていまい、結果として上司の真意をしっかり伝えることもできません。

◆ 無反応な「聴きすぎ」のリスク

   他方、オンラインで部下からの報告や連絡や相談を上司が受ける際に、じっと無反応で聴き続ける「聴きすぎ」にも要注意です。一心に話している部下にとっては、上司の反応がないと、上司がどの程度分かって聴いてくれているのか、自分の意見に肯定的なのか否定的なのか、心配になります。上司は仏頂面のつもりでなくても、部下からすると押し黙っている上司の態度は威圧的で不安に感じるものです。

   そうなると悪循環で、部下が言葉少なになり、早々に発言を切り上げてしまうと、上司は部下が言いたいことを十分に聴き取ることができません。そこで、待ちきれない上司が話を取り返してしまい、結果、また上司の独演会になってしまいかねません。

反応の意識化とは?

   そこで、上司が留意したいのは、部下との対話にあたり、対面時のコミュニケーションよりもお互いの反応をより意識化し、相互の理解を確かめ合う「反応の意識化」です。

   すなわち、上司が自らの「話しすぎ」に注意し、自分の話を部下がどの程度理解しているか、話の途中で時々「何かわからないことはないかな?」「質問や意見があれば何でも出して」と、応答を促すことです。

   また、部下の話に対しては「聴きすぎ」に注意し、節々でわかりやすいリアクションや声かけを交えます。自分がしっかり聴いていることや、理解や共感の様子が相手に伝わるようにすることが大事です。

   「反応の意識化」は、リモートワーク下での留意点として強調していますが、じつはコーチングの技法などでも推奨される「傾聴」を積極的に取り入れることに他ならず、普段から心がけたいものです。

   傾聴は、「相手の話をじっと聴くこと」と誤解されがちです。確かに、「話しすぎ」をグッとこらえて、話し方と聴き方をコントロールしますが、単に黙って聴くものではありません。相手をより深く理解するために、積極的にこちらから聴きに行く「アクティブ・リスニング」を意味します。

   傾聴の方法は「6つのステップ」で理解し、身につけるとよいでしょう=上図参照。すなわち、(1)相手の話をじっくり聴く「姿勢」をとり、(2)話を「受容」的に受とめ、(3)「共感」の気持ちを表し、(4)訴えの内容を「確認」して、(5)しっかし「理解」したことを相手に伝え、(6)さらに相手を「内省」に導く、という手順です。

   次回の《後編》では、「傾聴の6つのステップ」をより具体的に解説していきます。


※マネジメント改革を実現する「上司力」の詳細をさらに詳しく知りたい方は、拙著「本物の上司力~『役割』に徹すればマネジメントはうまくいく」(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。


プロフィール

前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年(株)働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は「50歳からの逆転キャリア戦略」(PHP研究所)、「『働きがいあふれる』チームのつくり方」(ベストセラーズ)、「コロナ氷河期」(扶桑社)、「50歳からの幸せな独立戦略」(PHP研究所)、「本物の『上司力』」(大和出版)など30冊以上。近刊には、「人を活かす経営の新常識」(FeelWorks、2021年9月)および「50歳からの人生が変わる 痛快! 『学び』戦略」(PHP研究所、2021年11月)がある。

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