反応の意識化とは?
そこで、上司が留意したいのは、部下との対話にあたり、対面時のコミュニケーションよりもお互いの反応をより意識化し、相互の理解を確かめ合う「反応の意識化」です。
すなわち、上司が自らの「話しすぎ」に注意し、自分の話を部下がどの程度理解しているか、話の途中で時々「何かわからないことはないかな?」「質問や意見があれば何でも出して」と、応答を促すことです。
また、部下の話に対しては「聴きすぎ」に注意し、節々でわかりやすいリアクションや声かけを交えます。自分がしっかり聴いていることや、理解や共感の様子が相手に伝わるようにすることが大事です。
「反応の意識化」は、リモートワーク下での留意点として強調していますが、じつはコーチングの技法などでも推奨される「傾聴」を積極的に取り入れることに他ならず、普段から心がけたいものです。
傾聴は、「相手の話をじっと聴くこと」と誤解されがちです。確かに、「話しすぎ」をグッとこらえて、話し方と聴き方をコントロールしますが、単に黙って聴くものではありません。相手をより深く理解するために、積極的にこちらから聴きに行く「アクティブ・リスニング」を意味します。
傾聴の方法は「6つのステップ」で理解し、身につけるとよいでしょう=上図参照。すなわち、(1)相手の話をじっくり聴く「姿勢」をとり、(2)話を「受容」的に受とめ、(3)「共感」の気持ちを表し、(4)訴えの内容を「確認」して、(5)しっかし「理解」したことを相手に伝え、(6)さらに相手を「内省」に導く、という手順です。
次回の《後編》では、「傾聴の6つのステップ」をより具体的に解説していきます。
※マネジメント改革を実現する「上司力」の詳細をさらに詳しく知りたい方は、拙著「本物の上司力~『役割』に徹すればマネジメントはうまくいく」(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。
プロフィール
前川 孝雄(まえかわ・たかお)株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授
人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年(株)働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は「50歳からの逆転キャリア戦略」(PHP研究所)、「『働きがいあふれる』チームのつくり方」(ベストセラーズ)、「コロナ氷河期」(扶桑社)、「50歳からの幸せな独立戦略」(PHP研究所)、「本物の『上司力』」(大和出版)など30冊以上。近刊には、「人を活かす経営の新常識」(FeelWorks、2021年9月)および「50歳からの人生が変わる 痛快! 『学び』戦略」(PHP研究所、2021年11月)がある。