かつては「日本人は絶対に怒らない」として、世界のジョークにもなっていました。しかし最近の日本人は怒りやすくなっていると思いませんか?
電車の中で声を荒らげる人や、危険な煽り運転をする人、ネットで誹謗中傷を書き込む人や、周囲に当たり散らす人......。挙げていったらキリがありません。また、知らず知らずのうちに自分まで怒りやすくなってしまいます。
「アンガーマネジメントで読み解く なぜ日本人は怒りやすくなったのか?」(安藤俊介 著)秀和システム
怒りは防衛本能である
怒りは防衛感情です。怒ることで体を臨戦態勢にして、大切なものを守ろうとします。大切なものには価値観、考え方、立場、プライド、家族、仲間といったものがあげられます。守らなければいけないものが多い人は、必然的に怒ることが増えるのです。
自己肯定感の低い人は、守らなければいけないと思っているものが多い、という特徴があります。意識しているものもあれば、無意識のうちに感じているものもあります。いろいろなものを守らないと、自分を保つことができないと思い込んでいるからです。
よくある仕事上のケースを取り上げてみましょう。
「たとえば、仕事でミスをした人がいます。そのミスは些細なものだったものの、気をつけてほしいものではあったので、軽く注意したところ、『自分の責任ではない、頼んだ側の頼み方がおかしかった』と、半ば逆ギレとも言えるような返しをされたとします。なぜそれくらいの注意で、そこまでムキになって言い返してくるのか理解ができません」(安藤さん)
これに対する安藤さんの見解は、次のようになります。
「素直に自分のミスを認められないのは、些細なミスであろうとも自分がミスを認めることで、自分が悪いことをしたと思いたくない、それを認めてしまえば自分の価値がなくなるのではないかと、無意識に思っているからです」(同)
また、ミスを指摘されることは大げさではなく「自分の尊厳をおとしめる攻撃」と捉えます。そのため防衛しようと反撃に出るわけです。
「自己肯定感が高ければ、自分のミスはミスとして素直に認めることができます。ミスを認めたところで、自分の価値が下がるとは思っていないからです。ミスはミスとして認めればいいくらいの感覚でいられます」(安藤さん)
「しかし、自己肯定感の低い人にとっては、自分の非を認めることは、それがどんなに小さなことだとしても簡単なことではありません」(同)
私たちは色眼鏡で物事を見ている
こちらは攻撃とは思っていないのに、攻撃をされたと捉える人がいます。何をもって攻撃していることになるのかは、人それぞれ違います。
「仕事のミスを指摘されたとして、ある人は『自分の成長のために、あえて言いにくいことを言ってくれてありがたい』と受け取ります。一方、ある人は『自分を攻撃してきている、自分は悪くないから認めない!』と反発します。どちらの受け取り方が正しいというわけではなく、どちらも正しいのです。少なくとも本人にとっては」(安藤さん)
「自己肯定感の低い人は、様々な物事を、自分に対する攻撃として捉える傾向があります。攻撃をされれば反撃するのは生物としては自然な反応なので、自己肯定感の低い人は攻撃的になるのです」(同)
怒ることそのものは、悪いことではありません。問題は不要な怒りを燃やし、それがクセになってしまうことです。怒りは多くの人がハマりやすく、しかも中毒性が高いのです。有名人の不倫で怒る人や自粛警察なんかは、これらの典型例だと安藤さんは言います。
本書は、日本人が怒りやすくなっている理由を解説し、どのようにして身を守ればいいのか、自分はどうすれば怒りに振り回されずに済むのかを解き明かしています。仕事始めにあたり、読んでおきたい一冊です。
(尾藤克之)