エムスリー株が連日の昨年来安値、米FRBの金融引き締めで「成長株」の代表格が標的に

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   製薬会社のマーケティング(販売促進)支援などを手がける、ソニーグループ系のエムスリーの株価が2022年の年明け以降は連日、昨年来安値を更新している。

   好調な業績の伸びが鈍化することへの懸念も要因だが、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めに動くことへの警戒感からIT関連などのグロース(成長)株が世界中で売られており、日本のグロース株の代表格であるエムスリーの株価も急落している。

  • 医療系DX支援のエムスリー株が下落基調に……
    医療系DX支援のエムスリー株が下落基調に……
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高PER銘柄で外国人投資家らが「売り」に......

   エムスリーの株価は、2021年1月8日に上場来高値(1万675円)をつけた後は下げ基調となっており、22年1月11日には一時5006円まで値下がりし、1年かけて高値から半値以下、2020年7月以来の水準に落ち込んでいる。

   終値は1月5日から12日まで5営業日連続で下落。12日の終値は、前日比51円安の5052円だった。取引時間中の下落率が高かったのは6日(7.8%)だ。これは、米国時間5日に公表された21年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で、22年3月にも利上げを開始する可能性が示唆され、国債など保有資産の圧縮に踏み込む姿勢をも示したことが影響している。

   市場関係者の想定よりも金融政策の正常化を急ぐFRBの思わぬ「タカ派」ぶりに、世界の投資家が狼狽し、米ニューヨーク株式市場のダウ平均株価や、日経平均株価が軒並み下落した。リスク回避の波は、外国為替市場では円高方向に働いている。

   FRBの利上げ開始の想定は、従来の2022年6月から同年3月に、資産圧縮想定は2023年から2022年にそれぞれ前倒しされた。金利上昇見通しを背景に、今後の成長力が評価されて買われていたエムスリーのような高PER(株価収益率=株価が1株当たり純利益の何倍かを見る指標)銘柄は、外国人投資家らにとって相対的な割高感が高まり、売りが集中した。

医療系DXへの評価高く反転に期待も

   ここでグロース株の代表格とされる、エムスリーという会社について確認しておこう。2000年にソネット・エムスリーとして設立。2010年にエムスリーに商号変更。現在、ソニーグループの出資比率は33.95%で、ソニーGにとっては関連会社にあたる。

   当初から製薬会社向けに、ネットを通じて会員医師に対する医薬情報提供を支援する「MR君」を提供しており、こうした事業「メディカルプラットフォーム」が現在も主力で、売上高の4割程度を占めている。他に治験支援事業、医療従事者の人材サービス事業、海外事業が柱となる。海外で売上高の2割程度をしっかり稼ぐところがグローバルなソニーG系らしい。

   デジタル・トランスフォーメーション(DX)の流れの強まりとともに収益が伸張しており、2021年9月中間連結決算(国際会計基準)は、売上高にあたる売上収益が前年同期比30.2%増の976億円、純利益は2.8倍の407億円を記録し、高成長が続いている。

   ただ、4~6月期に比べて7~9月期のMR君の受注が鈍化したことなどから、人員不足などのボトルネックが意識されて株価は下落が続いていた。そして、ここへきてグロース株の代表格として、さらに売り浴びせられたというわけだ。

   もっとも、エムスリーの成長力を評価する声は根強く、「来期以降に顕在化すると想定される人員拡大による収益貢献のタイミングを投資機会として注目したい」(国内証券大手)との指摘もある。

   製薬企業だけでなく、医療現場自体のDX支援にも本格的に乗り出す方針で、近い将来に株価が反転する可能性もありそうだ。

(ジャーナリスト 済田経夫)

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