金融に国境なし! 各国の投資商品を比較してわかったこと【小田切尚登のマネーの寅年】〈前編〉

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2022年も不確実性に満ちた年になる!?

   ここで、多くの人にとってなじみが薄いと思われる商品市場について触れておこう。これは農作物や鉱業産品を先物で取引する市場である。ETF(上場投資信託)によって一般人も容易に売買できる。2021年には多くの産品の価格が大幅に上昇し、全体として55%という素晴らしいリターンとなった。

   コーヒーは76%、原油(WTI)は55%、木材は59%、天然ガスは47%、トウモロコシは23%、砂糖は22%、小麦は20%というふうに上昇した(ドルベース)。

   ただし、2021年の商品相場の高騰にはコロナ禍で需要が供給に追いつかず品不足にあった、という特殊要因が手伝っていることに注意が必要だ。

   商品相場は株価と逆相関して動く傾向があると広く考えられており、実際にも過去10年は米国の株価が上昇するのと対称的に商品価格は下がることが多かった。しかし、2021年は株式も商品もどちらも上昇したので、その理論に反する結果となった。

   以上が2021年の金融市場の見取り図である。ひと言でいえば「やはりアメリカが強かった」ということに尽きる。

   では、2022年の相場はどうなっていくだろうか?

   2022年を予測するには、相場に大きく影響するいくつかのリスク要素を検討する必要がある。まず新型コロナウイルスについてだが、経済に対するネガティブな影響はあまり大きくならないとみている。ロックダウンなどの移動の制限は多くの国で人々が受け入れなくなっている。よほどの緊急事態にならない限り、経済への悪影響は低く抑えられるだろう。

   今年はむしろインフレが大きな問題になり得る。中央銀行が金融引き締めに動いていくかどうかが注目される。今のところマーケットはこのリスクは大きくないと判断しており、それがアメリカを中心とする株価や不動産価格の上昇を支えている。しかし、ある時点で金利が大きく上昇し始めると、株価や不動産価格が大きく下落させる可能性は十分にある。最大の注目点である。

   地政学的な問題も重要だ。なかでも中国共産党の方針、ロシアがウクライナに侵攻するか、米国の中間選挙など...... が市場を大きくかく乱する可能性がある。また、ヨーロッパのエネルギー事情にも注目が集まっている。ロシアの天然ガス供給が途絶えると、ドイツなどではこの冬を越すのも厳しい状況となる。

   結局のところ、2022年も今までと同様に不確実性に満ちた年になるだろうということしか言えない。昨年まではとりあえず米国株を買っていれば何とかなってきたが、米国株が4割も上がってしまった今、我々は今後どういうふうに投資を進めていくべきか難しい状況に置かれている。これをどのようにしのいでいくか。今後それをさらに考えていきたい。(小田切尚登)

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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