プロダクト時代を支配する「青」と「赤」とは?
プロダクト時代を支配するのは「青」と「赤」のビジネスモデルだ。
どういうことか。
1つ目の「青」とは、商品を製造コストより高い値段で売ること。この代表はアップルだ。裏でデータ利用されることが少なく、「青」のビジネスモデルと呼んでいる。2つ目の「赤」とは、商品を無料で配り、あるいは原価以下で売り、他の企業に利用者のデータを有料で提供することだ。グーグルのアンドロイドがこれにあたる、「赤」のビジネスモデルを展開している。
動画でも「青」と「赤」はある。ネットフリックスは「青」だ。お金を払ってコンテンツを見る。一方、ユーチューブは「赤」だ。無料だが、アルゴリズムによって、少しでも興味を持ったものを押し付けてくる。このような二分化が多くの分野で見られるようになる、と予想している。
日本の読者にとって意外なのは、ソフトバンクを詳細に取り上げていることだ。1000億ドルのビジョン・ファンドはいくつかの点で破壊的であり、「世界中のビジネススクールで今後何十年にもわたって教えられることになるだろう」と書いている。
「戦略としての資本」として紹介しているが、距離が近いほどビジネスはうまくいくという原則、連続したラウンドでリード・インベスター(※)を続けないという原則、を無視している、と批判している。2016年以降、ウィーワークの複数ラウンドでリード・インベスターを務めているのはソフトバンクだけだという。「自分が売っている麻薬を吸う」ようなものだとたとえ、「痛みはソフトバンクの従業員にアウトソースされる」と、恐ろしい予言もしている。
(※)スタートアップ企業の資金調達ラウンドで、中心的な役割を担う存在。
大変革の対象になるのは「大学」だとして、1章割いたこともユニークだ。アメリカの大学の授業料が高いことは知られているが、これまでは学生ローンが支えてきた(ちなみに、平均的な大学生は、卒業時に3万ドル近くの借金を抱えるという)。しかし今後は、リモート授業によって、学生の数を大幅に増やすことができる、と見ている。巨大テック企業が世界的な有名大学と提携して、4年間で得られる学位の80%を従来の半額で提供するようになるだろう、と予想している。
著者はまた、あまりにも政府は無力になったとして、資本主義にブレーキをかける役割を期待している。それに関連して、巨大テック企業は独占禁止法による分割が必要だ、と明確に提言している。それは「罰」ではなく、「活性化策」であるという主張には、うなずける部分もあるのでは。
アメリカはなぜ、あれほど新型コロナの死者を出しながら、経済は好調なのか? その疑問に答えてくれるとともに、資本主義のダイナミズムを示唆してくれる一冊である。GAFAの顧客の一人である我々にとっても有益な卓見を開示している。
(渡辺淳悦)
「GAFA next stage ガーファネクストステージ」
スコット・ギャラウェイ著、渡会圭子訳
東洋経済新報社
1980円(税込)