2021年に新規株式公開(IPO)を果たした会社の数は、125社で、2007年(121社)以来14年ぶりに100社を超えた。前年の93社から32社増えた。なかでも、12月単月だけで32社にのぼる高水準で、市場は活況が続いている。
同社によると、2021年の世界のIPO社数は過去最高を更新。「世界的な金融緩和などを背景とした株価高騰が上場を後押しする重要な一因と考えられる。日本国内でも、2022年 4月の東京証券取引所の市場再編前に伴う駆け込み上場などの要因が加わっているとみられる」としている。
前年の新型コロナウイルスの感染拡大による影響で新規上場を見送った複数の企業がIPOを果たしたこともある。
東証再編に伴う「駆け込み上場」相次ぐ
IPOの状況を市場別にみると、高い成長可能性が期待される「東証マザーズ」が93件で1999年の市場開設以降で最多を記録した。全体に占める東証マザーズの上場割合は7割超となった=下表参照。
業種別にみると、最多は「ソフト受託開発」「パッケージソフト」など「情報サービス」の36社。たとえば、企業の情報活用を促進するソフトウェアやクラウドサービスを手掛けるウイングアーク1st、製造業・建設業を中心としたデジタルトランスフォーメーション(DX)実現支援やIT人材調達支援サービスを提供するコアコンセプト・テクノロジー、企業向けシステム開発を手掛けるラキールなどが上場した。
次に多かったのは「その他サービス」(15社)だが、再生可能エネルギー事業や省エネ対策システムを手掛けるリニューアブル・ジャパンや、ウェブマーケティング戦略による集客支援サービスや海外IT人材と企業とのマッチング、AI技術開発などでサービスを提供する全研本社、といった今注目のサービスを手掛ける企業が続く。
また、グループ会社の経営管理業を行う持ち株会社といった「その他の投資業」が含まれる「金融」(15社)も多い。なかでも各種ヘルスケア機器・サービスを提供するPHCホールディングスや、転職プラットフォームなどを運営するビズリーチを傘下に持つビジョナル、マーケティングとセールスの領域でAIプラットフォームを提供するAppier Groupなどは、初値ベースの時価総額が1000億円を超える大型のIPOとなった。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴うデジタル・IT関連サービス需要の急拡大を背景に、こうしたテック企業の新規上場が目立ったほか、経営環境の急激な変化を商機とした経営コンサルティング事業も12社が新規上場を果たした。
その半面、不動産業や製造業のIPO社数は減少している。
IPO社長の平均年齢は50.3歳と若い
調査では、IPO企業が設立から上場までの期間を聞いている。2021年に上場した企業の設立から上場までの期間は「18.8年」で、10年前(2011年)の「21.9年」と比べて3.1年短縮した。
帝国データバンクはその原因を、「設立から事業化・商品化までの期間が比較的短いIT関連企業の割合が大きくなった一方、ある程度の時間を要する製造業の割合が小さくなったことがある」と指摘する。
また、2021年にIPOを果たした企業の社長の平均年齢は50.3歳と、前年から1.4歳若返った。年代別にみると、「50代」が最も多く全体の42.4%を占めた。
IPO企業の社長の平均年齢は、上昇傾向にある全国の社長平均年齢を10歳近く下回る傾向が続いている。
なお、調査は帝国データバンクの企業概要データベース「COSMOS2」(約147万社収録)などを用いて2021年の国内IPO市場の動向を集計、分析した。12月29日の発表。