FRBの予想以上の「タカ派姿勢」が最大のリスク?
新型コロナの問題もさることながら、木内氏が日本経済にとってさらに大きなリスクになると指摘するのが、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め策の動向だ。
1月5日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録要旨の中で、FRBは市場の予想以上に「タカ派姿勢」(金融引き締め路線)を鮮明にしたのだった。
実際、FRBが利上げや保有資産の縮小を前倒しで進めると警戒する見方が一気に広がり、米国株式市場は1月5日、6日(現地時間)と連続して急落した。金融引き締めによって、株式市場に流入する資金が先細りするとの懸念が広がったからだ。とくに、米国経済を牽引してきハイテク株を中心に売られたことが特徴だ。
木内氏はこう指摘している。
「米国での物価高騰が予想外に長引き、FRBが利上げをさらに加速していけば、急激な金融引き締めが経済を悪化させ、また不均衡を抱えてきた金融市場に大きな調整をもたらす可能性が出てくるだろう。それが2022年から2023年にかけての、世界経済、日本経済の最大のリスクとなるのではないか」
こうしたFRBの市場の想定を上回る「金融引き締め路線」の影響について、「今後ハイテク株が重しになる可能性がある」と指摘するのは、野村アセットマネジメントのシニア・ストラテジスト石黒英之氏だ。
石黒氏のレポート「米ハイテク株急落と今後のポイント」(1月6日付)の中で、1月5日の米ニューヨーク株式市場で、主力ハイテク株で構成されるNASDAQ100が前日比3.1%安と大幅安となったが、その理由をこう説明する。
「(FRBが)市場の想定以上に金融引き締めに積極的なタカ派姿勢が示されたことで、『米長期金利の上昇・期待インフレ率の低下→米実質金利が上昇→バリュエーション面で相対的に割高感のあるハイテク株売り』という流れとなりました。NASDAQ100の12か月先予想PER(株価収益率)と米実質金利は連動する傾向が強かっただけに、同金利の上昇が今後も継続するようだと、ハイテク株の重しになる可能性があります」
そして、米実質金利とNASDAQ100の12か月先予想PERの相関図を示している=図表参照。
これを見ると、米実質金利と12か月先予想PERが連動していることがわかり、FRBの利上げによって、ハイテク株の下落が始まることは容易に想像がつく。
しかし、石黒氏はこうも指摘する。
「焦点となるのが、今後本格化する米主要企業の2021年Q4(10-12月期)決算発表です。情報技術や通信サービスなどハイテク業種の決算内容は、事前予想に対し、実績値が上振れる傾向が強く、今後の決算内容も同様の展開となると、業績面での見直し余地が出てくると想定されます」
短期的にはFRBの金融政策や、金利動向に左右されやすい展開が続きそうだが、ハイテク業種の利益成長期待は高いので、冷静に下値を拾うことも重要だという。
(福田和郎)