ホームセンター大手のカインズが東急不動産ホールディングス傘下の生活雑貨大手、東急ハンズを2022年3月に完全子会社化する。
ここ数年、ホームセンターが絡む合併・買収(M&A)が相次いでいる。ホームセンター業界はコロナ禍にあっても、感染対策や「巣ごもり」需要の拡大を背景に業績は好調だったが、「コロナ特需」だけでは乗り切れない苦境が再編の動きを加速させている。
コロナ禍で好調なホームセンター、2020年度の売上高は初の4兆円超
カインズは全国に227店舗を展開。一方の東急ハンズは、都市部を中心に86店舗を運営している。完全子会社化を発表した2021年12月22日の記者会見で、カインズの高家正行社長兼経営責任者(CEO)は、
「地方を中心に大型店舗を展開するカインズと、都市を中心に店舗を構える東急ハンズは相互補完性が高い」
と述べ、買収による相乗効果の大きさを強調した。
ホームセンター業界のM&Aの動きは活発だ。21年1月には家具・日用品大手のニトリホールディングスがホームセンター大手の島忠を完全子会社化した。また、ホームセンター大手のアークランドサカモトは、子会社のビバホームを22年9月に合併する予定だ。ビバホームは20年11月にアークランドの完全子会社になったばかりで、その動きは素早い。
ただ、コロナ禍にあって、コンビニエンスストアをはじめ、百貨店など小売業界全体が苦しんでいる中で、ホームセンターは比較的好調に推移している。アクリル板やビニールシートなど、感染対策用グッズの売り上げが伸びたほか、多くの人が自粛生活を送るなか、家庭内で楽しめるインテリア用品やDIY用の商品が売れたからだ。
日本DIY・ホームセンター協会によれば、20年度のホームセンター全体の売上高は4兆2680億円で、初めて4兆円に乗せた。
店舗はすでに飽和状態? どう生き残る......
しかし、ホームセンター業界に楽観論はない。「そもそもホームセンターは、日用品でドラッグストアやディスカウントストアと、インテリア用品でイケアなどの専門の小売業と競合するなど、異業界が絡んだ競争が熾烈だ。当然、インターネット通販との戦いにも対応しなければならない」(流通関係者)といい、経営環境は非常に厳しいからだ。
その一方で、ホームセンター各社が新規出店を加速してきた結果、「市場はすでに飽和状態にある」とも言われている。日本DIY・ホームセンター協会によれば、2020年度の店舗数は4860店で、10年度(4180店舗)比で約2割増、00年度(3730店舗)比で約3割増に膨らんでいる。
異業種の攻勢に加え、同業同士の戦いも年々激しくなっており、生き残りのための対応が避けられなくなっている。
中長期的に人口減少による消費の先細りが不安材料なのは他業界と同様で、コロナ禍の下での一過性の好調さに甘んじるどころではない。「むしろ今こそ、将来に向けた戦略や投資が必要だという考えが強まっている」(同)とされる。
地域の郊外型店舗というイメージが強いカインズが、洗練されたブランドとして定着している東急ハンズに狙いを定めたのも、将来を見込んでのことだ。カインズは東急ハンズの名称を将来は使わないという可能性も示しており、どのような戦略で買収の成果を発揮するのか、業界では注目の的だ。
カインズに続き、相手・規模など多彩なM&Aが引き続き行われる可能性は高く、ホームセンター業界には期待や不安が渦巻いている。(ジャーナリスト 済田経夫)