一見、華やかなモデル界や芸能界。実際には不安定な業界で何の保証もありません。
世間からの需要や人気は水モノであり、競争は非常に厳しいものがあります。そんな中で「何年も長く活躍を続けている方」「多くのファンがいて人気が長続きしている方」には、どうやら法則があるようだと気づいたのです。
モデル歴40年、テレビCMには70本以上出演しつつ、オスカーの全盛期を築いた著者が明かす成功の秘訣とは?
「トップの法則 選ばれる人たちが密かに続けていること」(伊藤芳則著)秀和システム
売れたいなら「水になれ」
水は与えられた器によって従い、逆らうことがありません。反面、時と場合によっては、氷のような凶器にもなり得る強さも秘めています。また、水はつねに停滞することなく流れているもので、流れを失った水は濁り、淀み、やがて腐っていきます。
モデルの世界でも同じことが言えるでしょう。たとえば「私は雑誌の仕事しかやりません」「ファッションショー以外はイヤです」「スーパーのチラシの仕事はNG」などと言う、こだわりの強いモデルがいます。これはまさに停滞した水と同じことです。
伊藤さんは、次のように言います。
「売れるチャンスを自ら捨てて、消えていくモデルがどれほど多いことか。僕はマネージャーに言われるまま、CMやショーモデル、雑誌、広告、カラオケ動画、スーパーのチラシまで、なんでもこなしてきました。もちろん、NGはありません」
「洋服が主役であるファッション誌やショーなら、洋服をより美しく見せるポーズやウォーキングを工夫し、一方で、航空会社のイメージモデルの際は『エグゼクティブなビジネスマン』を魅力的に演じます。つまり、水のように『求められるまま変化する精神と魅せ方』が大切なのです」
伊藤さんは、モデルの寿命は3年だと言います。大学1年生から3年生までモデル業をし、4年生で就職試験をし、大卒と同時にやめるモデルが一般的です。しかし、伊藤さんは幸いにも4年間継続できたことで自信につながります。東京でもやっていけるだろうと確信したことで、就職活動はせずに上京しました。
NO! は失敗する悪魔の呪文
ここで、「You、やっちゃいないよ」が知られているジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川さんのエピソードを紹介します。
伊藤さんは、
「元KAT-TUNの赤西さんは、オーディションに落ちたあと、つけていた名札を返し忘れたことに気づき、そこで片づけをしていた普通のおじさんに返したそうです。それがなんと、ジャニー喜多川社長で『Youも残っちゃいなよ』の一言で合格したという逸話があります。ジャニーさんは用務員のような出立ちで、『どういう子がどのように動いているのか』を観察しているそうです」
「V6の長野博さんは、ジュニア時代、ジャニーさんから「You、スケボーできる?」と訊かれて『できません』と答えたらしいのです。数分後にも、また同じ連絡があったのですが、長野さんはできないことを強調しました。が、彼は後悔することになります。『スケボーができる』と答えたメンバーが、当時、人気絶頂だったアイドルグループ・光GENJIのバックダンサー(スケートボーイズ/のちのSMAP)に選ばれたのです」
と書いています。
私が秘書をしている時、「NO!」の返事は許されませんでした。できていなくても「YES!」と答えることが求められました。その時に、100%できなくてもいいのです。必要とされる局面まで時間があるなら、その時までに60%に仕上げれば問題はありません。
「できます!」と言い切ることが、チャンスをつかむ意味でも非常に大切です。細心の注意を払ったとしても何が起こるかはわかりません。だったら、能動的に動いてチャンスをつかむほうが得策というものです。この考えは道しるべになると思います。
(尾藤克之)