これはただの円安ではない? 2022年は運命の分かれ道!「日本にお金が戻る経路が見当たらない」(志摩力男の展望)

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2022年の米ドル円は110~120円を予測

   多くの正統派エコノミストは、日本円が極めて割安なこと、経常収支黒字が続いていることから、いつかは円高方向に戻るはずと考えています。よって、2022年の予測も、目先は米国の金利上昇に合わせて、ドル高円安が若干続くかもしれませんが、いずれ割安な円に資金が戻るので、中長期的には円高リスクが上回ると考えている人が多いように見えます。

   問題は、それがいつなのかですが、日本側の理由としては上述した天災のケース以外、あまり想定できません。日本での運用利回りが海外を上回るはっきりとした見通しがあるならば、資金は戻ってくるでしょうが、日本銀行の黒田東彦総裁は「金融緩和を続ける」とはっきり明言していますし、報道によると安倍晋三元首相も、現在の岸田文雄総裁にアベノミクス(=超金融緩和政策)を続けるように要請しています。つまり、日本の超金融緩和政策が変更されることは考え難いということです。

米国はテーパリングを加速させる(写真は、ホワイトハウス)
米国はテーパリングを加速させる(写真は、ホワイトハウス)

   米国は今後、テーパリング(量的緩和の縮小)を加速していきます。そして2022年には3回の利上げが想定されていますが、そうなると、しだいに円安が進む展開をやはり想定せざるを得ません。

   しかしながら、米国側のリスクとしては、株価の動向があります。新型コロナウイルスの発生以降、かつてないレベルの財政出動、金融緩和が行われ、それが株価を大きく押し上げましたが、その要因は今後消えます。

   金融環境は引き締まるので、新興のグロース株には極めてネガティブです。「ビルド・バック・ベター」法案が今後どうなるかわかりませんが、可決されなければ、2022年のGDPを今後0.5%程押し下げると見られています。

   米国株の強さは、米国の財政支出と超金融緩和だけに支えられたものではありませんが、割高であることは事実です。2022年中のどこかで20%程度下落する可能性はどこかであるかもしれません。その時は、「リスクオフ」として、ドル円を押し下げる方向に作用するでしょう。

   ただ問題は、株価が下げ続けるかです。割高な部分は剥落する可能性はありますが、米IT企業の本質的な競争力の強さまで否定されるものではないと思います。下げたところで、何を買うかとなれば、やはり米国のIT企業になってしまうのではないでしょうか。よって、下げても20%程度と思います。

   2022年のドル円相場は、基本的に110~120円、広くて105~125円といったレンジで、メインシナリオとしてはゆっくりと120円方向に行く展開でしょうか。米国株が下落する局面では円高に進むでしょうが、ITバブルやリーマン・ショック時のような大規模な下落は想定していません(そうなれば、シナリオはまったく別になります)。20%程度の下落なら、ドル円は下げて105円程度でしょう。(志摩力男)

志摩力男(しま・りきお)
トレーダー
慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券など大手金融機関でプロップトレーダー、その後香港でマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現役トレーダーとして活躍中。
最近はトレーディング以外にも、メルマガやセミナー、講演会などで個人投資家をサポートする活動を開始。週刊東洋経済やマネーポストなど、ビジネス・マネー関連メディアにも寄稿する。
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