お金に働いてもらおうぜ!「運用」は特別なことではありません リスクの世界にようこそ!【下】(小田切尚登)

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   運用についての話をすると、

「私は運用には興味がありません」
「私にはそんな能力がないので」

   といった反応を受けることが多い。

   なかには、

「カネのことを考えるのははしたない」
「カネのことなど妻(夫)とさえ話したことがない」

   という人がいる。

   これはとんでもない間違いである。我々が真っ当に生きていくのに最も基本となるのは一つはカネ、もう一つは人間関係である。その二つに真剣に向き合わない人に人生の成功はおぼつかない。

   考えてみて欲しい。将来はこういうことになるのだから......。

  • 「継続は力なり」である!</p>
    「継続は力なり」である!

  • 「継続は力なり」である!</p>

我々の究極の目標は「サバイバル」である

【その2】長い目で考えていく

   我々の究極の目標はサバイバルである。「死なないこと」と言い換えても良い。ああしたい、こうしたい、といくら思ったって、命を失ってしまったら終わりである。すべては「生きてナンボ」ということだ。

   運用の目標も基本的には同じである。運用によって資産が大きく増えていけばもちろん素晴らしいが、そこまで行かなくともじっくりと時間をかけて運用していけることが目標となる。長い間続けていけば、いつの日かチャンスを大きなつかめる可能性も出てくる。「継続は力なり」である。

   本気で投資をしようとしたら最低でも10年の期間は腰を落ち着けて頑張れるようにしないとだめだ。世界を代表する投資家のウォーレン・バフェットは10代から投資をしているが、彼が10億ドルを超える資産を築いて世界的な投資家をして名をはせるようになったのは50代半ばになってからである。

   大事なのは、日々の生活に追われる思考形態を捨てて、長い目で人生を見ていくこと。そうすればおのずと持続力と計画性が身につくだろう。人生に波があるように、相場も上がることもあれば下がることもある。ちょっと損をしたらパニックになってしまうようなメンタルでは、投資は無理だ。「失敗は人生の糧となる、命を失わない限りは」と言ったのは確かニーチェだったと思うが、失敗は後から振り返れば、必ず良い経験になる。我々は成功体験からは学べず、失敗からしか学べない。

   逆に言うと、失敗をいろいろとしたとしても「致命傷にはしない」ということが大事になる。今の世の中はコロナ禍などの問題もあるが、全体的にはまずまず平穏に過ぎてきている。しかし歴史を振り返ると、世界経済そして日本経済は怒涛のような時代の繰り返しであった。我々の先達は戦争、大恐慌、さまざまな気象異常、コロナ禍より遥かに深刻な感染症...... といった危機を何度も経験してきた。

   私の世代だと1990年をピークとするバブルとその崩壊を知っているが、当時が如何に異常な状況だったかは経験した人でないとわからないだろう。こういう事象は将来いつかまた必ず起きるに違いない。これらにうまく対応できる態勢を今から作っておくことが非常に大事になる。

   近視眼的な見方に陥ってしまって短期的な動きに過度に影響される人は、結局のところ「その日暮らしの人生」を送っているに過ぎない。コロナ禍になろうとも、株価が下がろうとも、自然災害が起ころうとも我々は生きていくしかない。その先に豊かな未来を築けるかどうか。そのベースになるのが長期的な視野に立った運用なのである。

「ノーリスクで儲かります」はインチキだと思ったほうがいい

【その3】リスクを理解し、リスクとうまく付き合う

   ジャングルに入らないと獲物は獲れない。リスクを取らない限り、リターンは得られないということだ。

   日本人はリスクについて疎いと言われる。これは「リスクを負うのは国や会社などの組織であって、個人はリスクから守られるべき」という社会的合意があるためだ。一種の社会主義的な考えと言ってよいだろう。いわゆる終身雇用制も、そのような発想から生まれたものだし、お金ができたらとりあえず銀行預金をしたり国債を買ったりしておく、というのもリスク回避の考えによる。

   しかし、株を買わずに銀行に預金するだけでは「投資」とは言わない。「預金しても、ほとんど金利がつかない!」などと文句を言っている人は、ジャングルに行かずに「獲物が獲れない!」と嘆いているようなものだ。

   大事なことは、まず一歩を踏み出してリスクを取ること。それ以外に事態を改善する方法はない。そもそも、リスクがない世界などというものはこの世に存在しない。もしもリスクがなさそうな投資商品があったとしたら、それは落とし穴が隠れているだけであり、そういう場合こそ特に気を付けないといけない。

   「ノーリスクで儲かりますよ」などという儲け話はまずインチキだと思ったほうが良い。一方で数百万円以内程度の普通の銀行預金は銀行と政府が何重にも守ってくれているものなので、そこに超過リターンなどあるはずがない。ノーリスク・ノーリターン(リスクを取らなければ儲けもない)である(ただし、厳密にいうとインフレなどのリスクがあることに注意)。

銀行預金という「宇宙服」を脱ぎ捨てて!!
銀行預金という「宇宙服」を脱ぎ捨てて!!

   株式のように価格が常に変わっていくようなものを購入するのには勇気がいる。国の経済や会社の経営状態は日々刻々と変化しているが、株価の変動にはそのような実体的な変化と、それに加えて人々の様々な思惑が反映している。

   しかし価格変動というのは、いわばリアルタイムの実況報道であり、我々にとって非常に有益な情報だとも言える。これを使って状況を確認しながら資産を増やしていく、というのが運用の醍醐味である。

   子供は泥んこになって遊んだり走り回ることによって、ケガをしたり病原菌をもらってきたりするが、それは成長に欠かせないものである。ちょっとした傷や病気はいずれ治るし、それによってリスクへの対処の仕方を学習していく。もしも子供に宇宙服のようなものを着せてそういうリスクから完全に守るようにしたら、その時点ではリスクがなくなって良いように見えても、長い目でみるとリスク管理ができない人間が育ってしまい、大変なことになる。

   株を買って一定程度の損をするというのは、子供がかすり傷や切り傷を負うようなものだ。それが腕や足を失ったり命を失ったりするような深刻な事態にならない限り、我々の糧になる。

   銀行預金という宇宙服を脱ぎ捨てて、株式や債券の世界(ジャングル)に一歩踏み出す人だけが獲物を狙える。リスクの世界にようこそ!(小田切尚登)

(おわり)

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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