運用についての話をすると、
「私は運用には興味がありません」
「私にはそんな能力がないので」
といった反応を受けることが多い。
なかには、
「カネのことを考えるのははしたない」
「カネのことなど妻(夫)とさえ話したことがない」
という人がいる。
これはとんでもない間違いである。
我々が真っ当に生きていくのに最も基本となるのは、一つはカネ、もう一つは人間関係である。その二つに真剣に向き合わない人に人生の成功はおぼつかない。
考えてみて欲しい。将来はこういうことになるのだから......。
「100歳まで生きる」ということ
◆ 100歳まで生きる
今の日本人の平均寿命はどんどん伸びてきて、現在、男性が82歳弱、女性が88歳弱である。医学は進歩しており、ガンをはじめとする病気が治るようになってきている。不治の病に罹ったり事故にあったりすることがないかぎり80歳までに死ぬことはまずない。あなたは100歳まで生きることを想定しておく必要がある。
◆ 50歳までしか給料をもらえない
日本企業の終身雇用制度は維持されなくなってきている。「年長者が窓際族などと揶揄されながらも高給をもらい続ける」などというのは昔話になりつつある。今の企業はすべてIT企業であると言って良い。技術が日進月歩で進化する中で、コンピューターが仕事をどんどん奪っていく。知識はどんどん陳腐化するので、ふだんから勉強していかない限り、知的な仕事を何十年も続けていくことはできない。そう考えると50歳で引退というのも結構甘い想定かもしれない。
◆ 年金(国)は頼りにならない
人々が長寿になり、引退後の期間が長くなれば、必然的に年金に頼る人が増えていく。一方で、少子化で若い人が減っているので年金の積み立てが減っていく。結果として月々の年金の金額が先細りになっていく。「年金暮らし」などという言葉は過去のものになっていくだろう。
......ということで、70代くらいで死んでしまう運の良い人(!?)を除くと、我々は50歳から50年もの間、会社にも国にも頼らず自分でカネを捻出する方法を考える必要が出てくるのだ。これはフツーに考えれば「個人破産間違いなし」という状況だ。それを如何に凌いでいけるか?
その答えは「運用」にある。
それは特段難しいことではない。投資はいくつかのポイントを押さえれば誰にでもできることである。高等数学が必要なわけでもなく、常識にある人ならば十分獲得できる技術である。最低限の金融の知識をつけることが必要であるが、それはこれからこちらで学んでいただくとして、前提となる三つの基本的考え方を挙げておこう。
一生、働きますか?
【その1】寝ているあいだに資産を増やす
給料取りの発想ではダメだ。いつまでもサラリーマンは続けられないし、医師や弁護士あるいはライターやアーティストといったプロフェッショナルの人たちについても、自分の作業の対価として報酬を得るというスタイルに変わりはない。
定年こそないにしても、彼らも一種の職人・労働者なのである。一日は24時間しかないことを考えると、得られる報酬には物理的な限界がある。
我々に必要なのは自分が頑張って働かなくても、寝ている間にも個人資産が増えていく仕組みを作ることである。カネに仕事をさせること、それが投資だ。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスといった人が一代で巨額の富を築けたのは投資をしてきたおかげである。投資を長年続ける以外に、富を大きく増やす方法は存在しない。
みなさんがメジャーリーガーの大谷翔平や、作家の村上春樹みたいに特別な才能があればそれで資産を築けられるだろう。あるいはユニクロ(ファーストリテイリング)の柳井正氏やZOZO(スタートゥデイ)の前澤勇作氏のように起業家として成功するというやり方もある。しかし、そういうふうに才能と運に恵まれた少数の人を除くと、凡人が資産を増やすには労働か運用のどちらかしかない。
一生労働を続けていきたいという人以外は、ぜひ投資について学んでいただきたい。(小田切尚登)
(つづく)