先代のカリスマ経営者は「先生」と思え!
一方でR氏同じく、超ワンマンでカリスマ経営者だった父亡き跡を継いだH氏は、R氏とは逆に、父を手本に父が引いた路線に逆らうことなく忠実に踏襲し、その後も至って順調に自身の会社経営を軌道に乗せています。
「今の会社をゼロから作り上げた父には到底かなわないと分かっていますから、対抗などしようもありません。経営者としての父は決してライバルではなく先生と思っています」
沙也加さんも、母・聖子さんを芸能界の「先生」と割り切っていたら結果は違っていたのかもしれないと、H氏の言葉を思い出し、ふと思いました。
世の大半の中小企業は同族経営であり、我が国では本人の好むと好まざるに関わらず、経営者である親の跡を継いで二代目、三代目経営者になるというのはごくごく当たり前の流れです。
傍で見る限りにおいては、H氏のような割りきりの良い人はむしろまれな部類でしょう(心の奥では、同じような悩みを抱えているようにも思いますが......)。二代目、三代目は「親の創った会社を継いで、無条件に社長になれてうらやましい限り」などと、羨望のまなざしで見られることも多いのですが、じつは先人たる親の存在の大きさを否応なく意識させられ、人知れず悩んだことのない者はいないといっても過言ではありません。
先代経営者でもある肉親がそれを引き継ぐ経営者の最大のライバルとなるのが、同族経営の宿命ともいえるのです。すなわち、その葛藤をいかにうまく乗り切るのか。そのことこそが、二代目、三代目の経営者に求められる重要なマネジメント手腕であると言ってもいいでしょう。