Season3となる「シューカツに使える企業分析バトル カブ大学対抗戦」が幕を閉じました。2021年はサプライチェーン問題から海運や半導体銘柄の急騰が目立ちました。
その流れに乗った投資家が、大きな利益を上げたことになります。
また、それぞれの得意分野や好きな企業の分析を行い、終了時まで銘柄の保有を続ける流れが多く見られました。
1位は同志社大! キーワードは「脱炭素」「GoTo」「総裁選」「インフレ」
では、それぞれの投資分析や銘柄選定を、1位から順に見ていきましょう。
◆ 同志社大学 SYさん キーワードは脱炭素、GoTo、総裁選
SYさんは、「脱炭素」「GoTo」「総裁選」など、日本の政治状況に留意して取引を行っていた印象です。相場格言に「国策に売りなし」という言葉があるように、政治的な状況に合わせて株取引をすると、比較的安全だといえます。国は営利企業ではないので、国の財政にとってマイナスとなっても資金を投入してくれることが多いので、企業にとっては大きなビジネスチャンスだからです。
現在は特に「脱炭素」が注目されています。2050年までの「カーボンニュートラル」を表明した国は、2021年4月時点でじつに125か国もあり、世界的な潮流でもあります。世界の動向が日本の国策に影響を及ぼすことも多いので、海外の情報を先取りしておくと国策銘柄に先行投資できるかもしれません。
◆ 明治大学 中村瑞希さん 米国株の知識を活かして「FRB」「インフレ」に着目
ふだんは米国株を取引している明治大学の中村瑞希さんは、米株式市場で第一の論点となるFRB(連邦準備制度理事会)の金融政策に詳しかったという印象です。材料費・人件費の高騰に由来するインフレと、それによって引き起こる景気後退という難しい状況で、FRBはインフレ対応を取り、テーパリングから利上げへ方向転換しました。
すでに金融相場は終了し、業績相場へ突入したマーケットでは、インフレの状況下で顧客に価格転嫁できる、より利益を残せる構造を持った会社に資金が集中しているように見えます。
◆ 慶応義塾大学 八田潤一郎さん 的確なテーマ選びが奏功
FRB(米連邦準備制度理事会)による量的緩和の終了が近いことから、業績相場入りによるバリュー株優位を見込んだのは見事でした。そのほか、「脱炭素」「地銀改革」「資本効率性」など市場のテーマを的確に追っていた様子が印象的です。
ちなみに、銀行株に注目した「地銀改革」は、多くのページビューをとりました。
コロナ禍で、各国で物資の供給が滞ったことや労働参加率が低下したことを受けてインフレーションが高止まりしています。貴金属や原油、半導体といったコモディティ市場においても顕著に見られたことから、白銅(7637)への投資は大成功でしたね。
小学生の時に株式投資を始め、アベノミクス相場で大きく資産を増やすも、2015、16年のチャイナショック、18、19年の米中貿易摩擦を経て、機関投資家や地合いの影響を比較的受けにくいニッチな小型銘柄の長期投資にシフト。20年のコロナショックで分散投資とリスクヘッジの重要性を認識し、FX、不動産、暗号通貨、コモディティ、デリバティブを新たに運用しながら、毎日勉強中。金融を学ぶ「おもしろさ」、投資の「楽しさ」を多くの人に知ってほしいと願う。
◆ 慶応義塾大学 もーりーさん ふだんはテクニカル分析も対抗戦仕様で挑戦
ふだんはテクニカルを重視するも〜り〜さんは、ファンダメンタルとテクニカルの合わせ技で銘柄とタイミングを選択。ファンダメンタルとテクニカル、どっち派論争が絶えませんが、両方うまく活用できたら最高ですよね。
一般的には、テクニカル分析中心で取引する人は短期売買になれていると思うので、中長期で取引することが難しかったことが想像できますが、そのあたりもクリアしたようで、頼もしい限りです。
明治大は堅実に業績や資産状況を重視
◆ 専修大学 めがねちゃん 「割安株」に注目も思わぬ落とし穴に注意
株価収益率(PER)、株価純資産倍率(PBR)を用いた割安感を分析に用いていました。業績が悪くて株価も安い会社ではなく、業績が良いのに割安な会社を選ぶことも注意していて良いと思います。ただ現在、業績が良かろうと、将来の見通しを理由に売られている場合もあります。割安なまま、安値を更新しつづける会社もあるため、損切りラインを設けるとなお良いと思います。
◆ 慶応義塾大学 すんぴぴさん 株式投資の「王道」を行く!
伸びている企業の主力事業を分析し、中長期スパンでの運用を前提にテクニカルで買い場を探すという投資スタンスでしょうか。大枠を把握し、詳細に落とし込み、決算から成長力を確認して押し目を拾うという株式投資の王道を感じました。
主力事業の競合や今後の見通し、市場状況などを分析に加えると、より説得力のある内容になったかと思います。
◆ 明治大学 MRさん 業績や資産状況を重視して投資
MRさんは業績や資産の状況を重視して、売り上げや営業利益であったり、資産・負債の増減だったり、そのあたりをよく見ていました。
配当や自社株買いといった株主還元は、利益から支払われるので、株主還元が盛んなアメリカではEPS(1株あたり利益)が特に注目される傾向にあります。
◆ 北海道大学 とがぴさん 「コロナ相場」は抗体カクテルに光技術、医療機器で攻めた
抗体カクテルや医療機器のメーカー、米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和の段階的縮小(テーパリング)など、「コロナ相場」の代表的テーマを中心に攻めている印象でした。不景気の状況下でも、さまざまな業界で何かしらの利益を上げますし、不景気ゆえにその業界に資金が集中する構図もあって、それが大きな投資チャンスでもあります。
今後は世界的な高インフレと金融政策の縮小という不利な状況に向かっていきますが、オミクロン株の感染拡大などで再び「コロナ銘柄」が活況となるかもしれませんね。
埼玉県出身。
学業の傍ら、突出した値上がりをつかんだ!
◆ まとめ
1位は、同志社大学のSYさんでした。ただ、みなさん投資系サークルに所属しているだけあり、綿密な分析や目の付けどころに光るモノが感じられました。学業の傍ら、突出した値上がりをつかみ、インデックスをはるかに上回る結果となっています。
購入した銘柄を保有したままカブ大学対抗戦の期限を迎えた銘柄は多くあります。引き続き、保有することでプラスに転じることでしょう(もちろん、下落することもありますが......)。
筆者がコメントしても仕方ないのでは? と思うほどの実力ですが、最後にちょっとだけアドバイスをさせていただければと思います。それは、必ずしも「業績が良い銘柄が上がるわけではない」ということです。海外株式市場が急落すれば、多くの個別銘柄は売られます。また、誰も気づけていないような良い銘柄を見つけても、他の誰も買わなければ株価は上がりません。
そのため、世界経済の先行きを占う主要国の金融政策や景気動向などのマクロ経済や、自身の投資する銘柄の個人投資家動向を知ることで、より投資パフォーマンスの向上につながると考えられます。
みなさんの今後の成功を、心より願っております。
半年間、おつかれさまでした。(児山将)
◆企業分析バトル カブ大学対抗戦のルール学生投資連合USIC
・月額200万円を投資金額の上限とするバーチャル投資です。
・投資対象は新興市場を含む、国内の上場企業の現物取引です。
・運用期限は最長で6か月。銘柄選定の最終月は10月になります。
・順位は11月末時点で、投資した銘柄(企業)の売買や配当で得た収益の騰落率で決めます。
「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
http://usic2008.com/