意外に怖い中国の不動産バブル崩壊
そして、3つ目のリスク要因は、中国の不動産市場の破綻だ。ほかのシンクタンクでは、中国経済の減速については比較的楽観視するところが少なくないが、大和総研は非常に厳しく注視している。
「(中国の)民間部門の債務残高対GDP比は、バブル崩壊を経験した日本、米国、スペインのピーク時を超えている。(中国)政府の政策余地の大きさもあり、当面のバブル崩壊リスクは限定的とみているものの、その動向には注意が必要だ。上記3つの国のバブル崩壊後の価格推移を機械的に中国に当てはめると、不動産価値の減少額は最大280兆元(=5040兆円/(中国の家計)可処分所得の約4倍)に上る。中国でリスクが顕在化した場合、負の資産効果を通じて個人消費が大幅に抑制されることは避けられないだろう」
こうしたリスク要因をはらみながらも、「新型コロナの感染状況が落ち着けば」という条件のもと、経済活動の再開や岸田文雄政権が取りまとめた経済対策の効果もあって、個人消費が高まるだろう、と予測する。また、企業の設備投資も進み、実質GDPの成長率がプラス4.0%になるというのだ。
オミクロン株の脅威については、みずほファイナンシャルグループ(FG)がまとめた43ページもの「2022年新春経済見通し」(12月23日付)のなかでも、もっとも警戒を要する3つのリスク(=コロナ感染・中国経済・米国インフレ)にあげている。
みずほFGでは、2021年末から2022年春にかけて人出が急増する結果、新型コロナの「第6波」が2022年夏場(7月~9月)にピークを迎えると想定していた=図表2参照。このグラフを見ると、感染者の数は2021年7~8月にピークを迎えた「第5波」よりも1.5倍ほど多い。
そのため予想では、緊急事態宣言に類する措置が出されて、ワクチン未接種者を中心に消費活動が下押しされる、としていた。だが、それはデルタ株によるシミュレーションであり、仮に感染力がもっと高いオミクロン株に置き換わった場合、「第6波」のピークは2022年2月~3月に前倒しされる、と見ている。
こうした先行き不透明感は残っているが、2022年の日本経済はどうなるのか――。同じく、みずほFGによる「2022年新春経済見通し」を見ていく。
それによると、2022年も半導体不足が継続し、自動車のばん回生産は限定的だと、やや悲観的な見通しを述べている。
「半導体不足は最悪期を脱したものの、半導体工場は既にフル稼働しており、供給余力に乏しい状況(増産計画で規模の大きなものは2023年以降に稼働する案件が多い)。ばん回生産は、一部のメーカー・車種に限定されると予想」
また、「経済活動正常化を受けて企業収益はコロナ禍前に復する」としながらも、
「2021年度の設備投資は前年比プラス2.8%と増加に転じるが、前年度落ち込み分(マイナス7.5%)を取り戻すには至らない」「先行き不透明感が残るなか、投資水準がコロナ禍前に戻るのは2023年度」
といった案配だ。