「コロナ後」は見えたか! 2022年の不動産・住宅市況はどうなる?(中山登志朗)

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なぜ、コロナ禍でも住宅需要は落ち込まなかったのか?

   これまでのところ、コロナ禍でも住宅需要は大きく落ち込んではいません(2020年4月の1回目の緊急事態宣言発出時は供給・流通がほぼなくなったことで需要も見えなくなりました)。その要因は大きく分けて、二つあります。一つめは、歴史的な住宅ローン低金利です。12月現在では変動型で0.310%というローン商品や、重大疾病でローン返済が困難になった際は元本が半減もしくはゼロになるものまでありますから、生命保険に加入しなくても良くなるような熾烈な「住宅ローン競争」が起きています。

   これに加えて、2021年度からは住宅ローン減税の対象(内法)面積が従来の「50平米以上」から「40平米以上」に緩和されたこと(新築のみ)、控除期間が13年に延長された特例が維持されたこと、など主に住宅購入に関する制度的な後押しが拡充されたことが挙げられます。もちろん、コロナ禍によってテレワークが定着し、オンもオフも過ごすことになった住まいのあり方を改めて見つめる機会が増えたことも影響していると言えるでしょう。

   二つめは、これらの制度的なものとは別に、ハウスメーカーやマンション・デベロッパーの販売手法が大きく変わったことが挙げられます。コロナ禍で非接触&「三密」を避ける販売手法に変わった結果、プッシュ型の営業スタイルではなく、VRなどを導入してオンラインでの説明会などを実施し、品質の良さや居住快適性、安全性などを丁寧に説明する手法が導入されました。いわゆる不動産業界におけるニュー・ノーマルです。

   新築も中古も積極的に売り込もうというスタイルではなく、品質重視(当然ながら価格も相応ですが)であることを理解してくれた顧客に売れれば良いという「数を追わない販売スタイル」となり、購入側が情報収集も含めて積極的に探さないと、人気物件はすぐに売れてしまう状況となっています(高級自動車の販売手法に似ています)。

   実際に、首都圏では新築マンションの新規供給および在庫が減少する一方、契約率がアップするという現象が起きています。欲しいのに希望通りの物件が買えない、という購入意欲を喚起させる販売手法が奏功しているようです。

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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