セミオーダーならではのきめ細かな調整
――実際に使ってみたい場合は、どうしたらよいでしょうか。
重松さん「取扱店である弊社サロン(全国のレディースアートネイチャーサロン、既製品ウィッグショップ『ジュリア・オージェ』、病院内サロン)にお越しください。スタッフがサポートします。なかでも、サイズ選びは難しいと思います。実は、抗がん剤治療によって脱毛すると、とくに女性は頭のサイズが変わって、ワンサイズ小さくなることも。そのため、スタッフが治療前の状態を触って確認して、治療の過程で頭のサイズがどう変化しそうか想定したうえで、サイズを提案しています」
――ウィッグのフィット感も調整してくれるそうですね。
重松さん「それも大事な点です。ふだんは気づかないと思いますが、人の頭の形はそれぞれ違います。調整前のウィッグを身に着けると、頭皮との間に隙間ができて浮いてしまうとか、ゆるいとか...... フィット感がよくないのが普通です。そこでスタッフが、違和感のあるポイントを細かく確認。その後、熟練の技術スタッフが、ウィッグのネット部分を微調整して、その人にぴったりなウィッグに仕上げるのです。
いまは、治療方法も進歩して、通院しながら仕事をされているケースも多くあります。1日8時間など長時間使用する間、ウィッグを身に着けていることを忘れてしまうような、それくらいのフィット感が出せるようお手伝いしています」
――サロンではほかに、どんなサポートをしていますか。
重松さん「サロンには専門の美容師がいて、自毛だけでなく、ウィッグのカットやセットの変更も承ります。たとえば、購入時はそれまでのヘアスタイルに合わせてロングヘアを選んでも、長く使ううちに、『短くしたい』『スタイルを変えたい』と思うものです。そんな気持ちの変化にも寄り添って、対応できる体制があります」
――アートネイチャーではいま、病院内にもサロンを設けていますね。
敦賀さん「現在、全国の病院9か所にあります。来年(2022年)1月にはもう1か所増える予定です。病院内サロンでは、『アンクス』の紹介や試着、販売をはじめ、シャンプーやヘアカットにも対応いたします。試着の際はカーテンで個室状態にできるのでご安心ください。ほかにも、治療中の生活を支えるアイテムをワンストップで用意して販売しています」
――病院向けの活動の一環としては、2021年11月には「あなたのための外見ケア」という冊子を発行しました。これは、全国の化学療法を行う医療機関を通じて無料配布しています。どのような狙いから発行したのでしょうか。
敦賀さん「お医者さんや看護師さんから、患者さんにがんの治療内容や副作用、体や外見の変化などを説明する際に、役立つ冊子があればなという声があり、制作しました。こうしたものがなかったわけではありませんが、どちらかといえば、かしこまった内容。そこで今回は、なるべくビジュアルを増やして見やすい冊子を目指しました。また、できれば手に取った人が元気になるようにと、おしゃれやメイク、ネイルなどの話題も盛り込んでいます」
――患者さんに寄り添う姿勢がうかがえました。最後に、アートネイチャーでは事業を通じて、SDGsや社会貢献にどのように取り組んでいるのか、教えてください。
重松さん「いくつかの観点がありますが、乳がんの正しい知識を広め、早期発見・早期治療を啓発する『ピンクリボン運動』に力を入れています。アートネイチャーでは、社員に向けて、乳がんの正しい知識を身につけ、乳がん検診を啓発できるようになってもらおうと、『ピンクリボンアドバイザー』(主催:認定NPO法人 乳房健康研究会)の資格を取得するよう促しています。現在、社員の2割ほどが取得しました。
乳がんは早く発見できれば、治療により一時的に髪の毛が抜けるにしても、助かる可能性が高いことはよく知られています。ところが、なかなか検診に行けなくて、発見が遅れてしまうことも......。私たちは治療の過程をウィッグで支えていますが、なによりもまずは乳がんの早期発見・早期治療が社会に根づくよう、会社をあげて『ピンクリボン運動』を地道に続けていきたいと考えています」