政府は2020年度当初予算案を、2021年12月24日に閣議決定した。一般会計の歳出総額は107兆5964億円となり、10年連続で過去最大を更新した。財源の3分の1を国の借金にあたる新規国債発行でしのぐ苦しい状況だ。
明るい話題もある。コロナ禍の収束傾向に伴う経済の回復で、21年度税収が過去最大の65兆2350億円となると見込んだことだ。これに伴い、新規国債の発行額自体は当初段階としては2年ぶりに減少する。
鈴木財務相、自画自賛「メリハリ」ついた予算案
鈴木俊一財務相は12月24日の記者会見で「メリハリがついた予算になった」と強調したが、財政健全化に努めたとする政府の説明は鵜呑みにできない。
特に問題なのが、予算編成をめぐって、毎年秋に編成される補正予算に、翌年度当初予算の一部を肩代わりされる「補正まわし」の手法が常態化しているからだ。
2020年度は当初予算こそ102兆円だったものの、コロナ禍で3度にわたって補正予算を編成した結果、歳出総額は最終的に147兆円台にまで膨らんだ。
なかでも「補正まわし」に使われたのは、20年末に編成された第3次補正予算だ。21年度当初予算と一体化した「15か月予算」と位置づけられたこともあり、財務省は本来、21年度予算で措置すべき事業の一部まで前倒しで補正に押し込んだ。
今年も同じ傾向が繰り返された。
岸田文雄政権は12月20日に成立した21年度補正予算と22年度当初予算を「16か月予算」と位置づけた。財務省はまたもやこれを利用し、22年度分の防衛費用の一部などを補正につけ回している。
15か月予算の「補正まわし」の結果、21年度当初予算の規模は106兆円台にとどまった。しかし、21年度補正予算が今度は22年度当初予算の「補正まわし」に使われた結果、21年度全体の歳出総額は140兆円に。3度にわたって補正予算を組んだ20年度とほとんど変わらない規模だ。
利払いや償還にかかる「国債費」は歳出全体の4分の1近くに
22年度も肥大化は免れない。
当初予算こそ107兆円となっているが、22年夏の参院選を控え、アピール材料を増やしたい与党の歳出拡大圧力は早くも強まっており、22年度補正予算の編成は避けられない状況だからだ。
いくら当初予算でメリハリを付けても、補正予算の規模が膨らめば歳出総額は増大する。これに対し税収は当初予算段階で見積もった金額から大きく上振れすることはまれだ。歳出が膨らめば、新規国債の発行を増やして対応するしかない。
日本の国債発行残高は21年度末に1000億円を超える。過去に発行した国債には利払いや償還に充てる「国債費」は22年度当初段階で24兆3393億円と、歳出全体の4分の1近くまで膨らんでいる。
「新たな借金(新規国債発行)をしても、その多くを現在抱えている借金の返済にまわす自転車操業を続けているのが日本の実態だ」
政府関係者はこう指摘する。政府の弥縫策は限界に近づいている。(ジャーナリスト 白井俊郎)