「私たちの『感動葬儀』に正解はない」
二人に話を聞くなかで驚いたのは、自社の理念や、それに紐づく行動原則に照らし合わせて、セレモニーディレクターとしてどうあるべきか、研修生には常に考えさせていることだ。
「私たちは何のために仕事をしているのか。会社の理念とあわせて、どんなふうに仕事に生きるのか――新人研修中、そんな問いをよく投げかけています。研修の修了直前には、ティアの理念になぞらえて、どんな行動が人に寄り添うことにつながり、今後に生かせるか、数人のグループ単位で発表してもらいます」(横井さん)
このプレゼン――理念発表会は、社長をはじめとする役員、次年度の内定者を前におこなう。横井さん、鷲見さんたちも同席し、研修生たちの成長には涙することもあるそうだ。
もっとも、彼らはようやくスタートラインに立ったばかり。6か月の研修が終わると、次はOJT(On the Job Training)で先輩が指導員として付き、いよいよ現場へ羽ばたくことになる。
実際に、新人研修を受けた今春入社の伊藤里紗(いとう・りさ)さんは、
「大変なことも心が折れそうになったこともたくさんあるなかで、みんなで協力して取り組んだ模擬通夜や模擬葬儀、大切な人を亡くされたご遺族と接する実地研修を通じて、貴重な経験がたくさんできました」
と、話してくれた。
このような「人財」育成に力を入れるのは、ティアが目指す「哀悼と感動のセレモニー」の質にこだわり続けたいからだ。
「私たちの『感動葬儀』に正解はありません。ご遺族と話して、故人様の好きだったことや趣味を取り入れた葬儀を提案するケースもあります。その時、真摯にご遺族からお話をうかがい、自分には何ができるか考え抜く力が必要。相手のことをどれだけ考えられるか。そして、一生懸命に取り組めるか――それらが『感動』を生むのだと思います」(横井さん)
「ご遺族に対して、通夜や葬儀の一連の流れを適切に説明する――それもまた大切な寄り添い方で、セレモニーディレクターに求められる資質です。それから、通夜・葬儀は社内外の関係者との連携も欠かせません。大事なのが、日頃からの些細なコミュニケーションだったりします。その積み重ねがセレモニーを成功させ、お客様からの『ありがとう』につながると信じています」(鷲見さん)