その時、遺族はどんな気持ちか? 真に寄り添うための「グリーフサポート研修」
研修が始まると、マナーやモラル、葬儀に関する基礎知識などを学ぶほか、ロールプレイング形式での模擬通夜・葬儀などが盛り込まれている。模擬通夜・葬儀は、本社横にある研修専用施設「ティア・ヒューマンリソース・センター」で、本番さながらの雰囲気の中で実践経験を積む。
各研修を担当する、人財開発部・部長の横井規浩(よこい・のりひろ)さんは、
「とくに新人向けの教育では、『守破離』でいえば、『守』の部分を大事にしています。まずは基礎となる『型』を身に着けてほしいので、行動や作法の理由を丁寧に教えています。そのうえで、目指しているのは、自分で考える力を身に着けること。研修はその土台づくりの場となっています」
と話す。
ちなみに、研修担当者は横井さん含め7人。新卒者は年によってばらつきがあり、例年15人~30人が参加する。
「研修が進むと、実際の現場に行く、実地研修があります。学んできたことが現場でどう役立つか、実習のなかで確認しています。そして、自身の行動がご遺族の役に立つ体験、直接感謝の声を聞く経験などを通じて、仕事のやりがいや意義を感じる大切な機会となっています」(横井さん)
また、研修では「グリーフ」について、きちんと学ぶ機会を設けているところも特長だ。グリーフとは、死別による深い悲しみの感情を、自分の中に閉じ込めてしまうこと。これは誰にでも起こりうる正常な反応だ。研修では、グリーフ状態にある時、人はどのように反応するか、心身の状態がどのように変化していくかを学ぶ。
この研修では、グリーフセミナーインストラクターとして、人財開発部 教育課・課長代理の鷲見志穂(すみ・しほ)さんが手腕を発揮する。鷲見さんは、一般社団法人グリーフサポート研究所認定「グリーフサポートバディ」の有資格者でもある。
「大切な方を亡くした時の反応は、泣いて悲しむだけではない場合があります。泣かない人もいますが、悲しくないわけではない。たとえば喪主として、気丈に振る舞っているのかもしれません。怒ってしまう場合などは、つらさや不安の表れだと考えられます。座学では、表情、言葉、口調などから、ご遺族の置かれた気持ちをとらえるスキルや、元気を取り戻していくプロセスなどを教えています」(鷲見さん)
それともう一つ、グループワークによって、グリーフの気持ちを追体験する機会も設けている。
「グループワークは3~4人で一組となって、私がたとえばこんな質問を投げかけます。――あなたが大切な人を亡くした時に、あなたはどうなると思いますか。その経験がある場合は、当時の気持ちを思い出してみてください、と。そのあとで思い出したこと、想像したこと、自分の考えや思いを他のメンバーに話します。周囲は一生懸命に聴くだけ。それが、本人にとっての『気づき』となり、ご遺族への思いやりを持った接し方や、声のかけ方につながるのです」(鷲見さん)
若い新入社員の場合、家族を亡くした体験、通夜や葬儀へ参列する機会が少ない場合もある。それだけに、こうした場が有効だ。また、セルフケアの観点でも大事だという。「相手の悲しみを受け止めすぎてしまい、自分の気持ちが落ち込み、仕事や生活に影響しないためにも、知識を持つことが大切」と、鷲見さんは話していた。