なぜティアは「感動葬儀」を続けられるのか? 「最期のありがとう」を支える人財育成の秘密

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   日本で一番「ありがとう」と言われる葬儀社になる――。

   そんなスローガンを掲げて、故人と遺族に寄り添う「感動葬儀」を手掛けているのが、今年(2021年)創業25年目を迎えた株式会社ティア(愛知県名古屋市)だ。

   新型コロナウイルスの感染拡大は葬儀業界にも影響し、ティアも一時は事業面で厳しい環境にあった。でも、「後悔のないお別れ」は多くの人にとっての自然な思い。そんな心情も重なってか、名古屋市内を中心とする同社では、葬儀件数が伸長したという。

   呼び水となったのが、創業以来のわかりやすい価格体系。そして、地道に続けてきた質の高い「感動葬儀」だ。セレモニーディレクターと呼ばれる社員たちが、遺族の思いに耳を傾けて、故人の人柄にあった「哀悼と感動のセレモニー」を作り上げている。

   もっとも、彼らがこの「究極のサービス業」をやり遂げるには、たしかな教育プログラム、先輩たちのサポートが欠かせない。知られざる「感動葬儀」の舞台裏とは――。

  • 自身の経験も踏まえて「大事なのは人生観、仕事観、死生観」と語る冨安徳久社長
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「最愛の人を亡くした『人』に寄り添えるのは『人』」

「新型コロナウイルスの影響は、多くの人が『死』について考えるきっかけになったと思います。誰にでも訪れる『死』があるからこそ、自分にとって幸せな『生き方』は何か、あらためて考える機会になったと思います」

   こう切り出したのは、「命の授業」の話し手としても知られる、ティア代表取締役社長の冨安徳久(とみやす・のりひさ)さんだ。

   もっとも、同社の事業環境に目を向けると、2020年9月期(2019年10月~2020年9月)の業績は、2006年の上場以来、初の減収減益を経験するなど、厳しさがあった。緊急事態宣言下の2020年春ごろは、葬儀は不要・不急の集まりではないとされたが、集まりにくい雰囲気があったからだ。しかし、ティアでは2020年7月以降、名古屋市内を中心とする既存店で、次第に葬儀件数が伸びたという。

「葬儀は、二度とその人と会えなくなる、最期のお別れの場。緊急事態宣言下では、その本質に思いが至らず、本来呼ぶべき人(親戚や友人知人など)が参加できないケースも散見されました。でも、やっぱり葬儀は、大切な人をお見送りする、やるべき儀式。私たちは感染予防対策を万全にして、社員を通じてお客様に『後悔しないようにお別れしてください』とお伝えした。そうした働きかけも、葬儀件数増につながったのだと思います」(冨安さん)
「相手のことを本気で考えられる人、根が明るい性格はこの仕事に向いている」と冨安社長
「相手のことを本気で考えられる人、根が明るい性格はこの仕事に向いている」と冨安社長

   コロナ禍の業績を支えたのが、「感動葬儀=ティア」の認知度だろう。現場を任されているセレモニーディレクターは、故人と遺族に寄り添う姿勢を貫いてきた。ティアの葬儀は「人」によって、差別化されているといってよい。

「どんなに時代が進んでデジタル技術が発達しても、最愛の人を亡くした『人』に寄り添えるのは『人』。これは、いつまでも変わらないと思います」(冨安さん)

   冨安さんは「人材」ではなく、「人財」と表現し、社員には大きな期待と信頼を寄せている。だが、どんな人にも、右も左もわからない「若かりし日」があったはずだ。

   そこで大事なのは、教育。ティアには、独自の社員研修プログラム「ティアアカデミー」がある。これは、冨安さん自身の現場経験(著書『最期の、ありがとう。』(Wonder Note刊)にも詳しい)なども踏まえて、つくられたもの。期間は中途入社で1~2か月、新卒の場合は6か月(導入研修)に及ぶ。

「大事にしているのは、いわゆる『徳育』の観点です。いまは、学校で教わる機会も減っていると思います。つまり、人としての社会性、倫理観――思いやりや誠実さです。最愛の人を亡くされたご遺族の気持ちに寄り添う私たちの仕事には、なによりも大切なことだと信じています」(冨安さん)
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