GDPに最初は入らなかった金融活動
「GDPは正しいか?」と題した第6章に、最も驚いた。GDP(国内総生産)の計算の基盤となる国民経済計算体系(SNA)が生まれたのは、1953年のことで、4回改訂されてきたそうだ。
最初、金融活動はGDPには入っていなかった。単に資本の移転(ある分野から別の分野へと資本を移動させるたけであり、それ自体では何も生み出さない)であり、非生産的だとみなされていたからだ。1993年の改訂で、初めて、金融仲介を二つの別々の生産活動だと定義づけた。借入れと貸付であり、銀行自体の資金を使用することが生産的活動だとみなされた。
さらに2008年になると、金融仲介機関の活動は明確になった。保険や不動産もGDPの計算の中に含まれ、ますます肥大化した。
2013年に、アメリカの計算方法が変わり、研究開発(R&D)が固定資産の一部に含まれるようになった。
「金融はGDPに入れるべきではない」という「過剰な金融社会」の著者、ヤコブ・アッサの議論を紹介している。貸付額をGDPに入れたら二重計算になるという主張だ。
玉木さんも金融所得の増加によって生じる統計バブルを生み出してしまい、不景気と景気後退の大きな差異が、多額の金融資産によって隠蔽されてしまうと指摘している。
景気の実感とGDPの数字との乖離が生じているのは、こんな仕掛けがあるのか、と納得した。
「金融化の世界史」
玉木俊明著
筑摩書房
924円(税込)