タックスヘイヴンの多くがイギリスの海外領土や旧植民地
大航海時代に始まり、産業革命、大衆消費社会の誕生、戦後の金融ビッグバンと本書の時間軸は長い。中でも重要な柱になっているのが、タックスヘイヴンに見られる租税回避行動についての記述である。
関税が高ければ、脱税しようとする。イギリスの茶の密輸から説明が始まる。スウェーデン東インド会社という無名の会社が登場する。スウェーデンよりもイギリスにとって大事な役割を果たしたという。ほとんどの航海が中国からの茶の輸入だった。
しかし、スウェーデンでは茶ではなくコーヒーが飲まれるため、茶の多くは再輸出され、オランダなどを経てイギリスに輸送されたと思われる。茶の関税は100%を超えるほど高く、スウェーデンから密輸された茶は無税のため安く、低所得者層でも買うことができた。フランス東インド会社も同様の役割を果たしたという。
18世紀には関税を回避するため、現在では法人税や所得税を回避するために、特定の場所が利用される。現在のタックスヘイヴンの多くがイギリスの海外領土や旧植民地であり、イギリスの帝国主義と関係している。
砂糖の生産地だったカリブ海の地域がタックスヘイヴンとなった経緯をイギリス王室の直轄植民地となったケイマン諸島、イギリス領ヴァージン諸島を例に説明している。
EU(欧州連合)のトップ20の銀行は、利益額の4分の1をタックスヘイヴンから取得しているという。その総額は2015年には250億ユーロだと推計されている。売上高は12%しかなく、従業員の率は7%しかないのに、巨額の利益を得ている。玉木さんは「EUの巨大銀行は、他地域で獲得した利益を、タックスヘイヴンに送金した」と推測している。
GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)に代表される巨大IT企業も巨額の利益を税率の低い国やタックスヘイヴンに留保している、と指摘している。