金融危機から20年超――。地方銀行の再編が再び活発化するなか、その存在感が増している。
帝国データバンクの「全国企業 メインバンク動向調査2021年」によると、地銀のシェアは40.51%で最も高かった。全業態の中では唯ー3年連続で4割を超え、過去最高を更新した。2021年12月15日の発表。
資金繰りから、経営再建や事業承継、取引先の新規開拓と、コロナ禍で疲弊した多くの中小企業の経営を支えるさまざまな場面で、地銀の役割が増している。地域によっては実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)などで地域密着型の金融機関を選択する傾向が強まっていて、金利以外の魅力を高めた金融機関が企業から幅広い支持を得ているようだ。
「第四北越銀行」、北陸勢として初のトップ10⼊り
調査によると、2021年の全国メインバンク社数のトップは「三菱UFJ銀行」。企業数は9万6511社で、2009年の調査開始以降13年連続のトップ。しかし、企業数は減少が続いているほか、全国シェアも6.64%と前年から0.10ポイント減少。12年連続のシェア縮小となり、減少幅は全金融機関で最も大きくなっている。
2位は「三井住友銀行」の7万7437社(シェア5.33%)。前年からシェアで0.08ポイント、企業数で約1200社が減少しており、こちらも昨年を上回る減少幅となった。
3位の「みずほ銀行」は、6万2291社。企業数で約1000社、シェアで0.06ポイントの減少で、過去最大の落ち込みを記録した。
メガバンク3行のメイン企業数は昨年比で約3700社、シェアにして0.24ポイントの減少(いずれも3行の合計)だ。メイン企業数の減少が止まらない。
一方、「りそな銀行」(メイン企業数3万469社、シェア2.10%)と「埼玉りそな銀行」(1万7418 社、1.20%)は、ともに企業数、シェアで増加した。
地方銀行・第二地方銀行では、「北洋銀行」(北海道、2万3895社)が最多。次いで「福岡銀行」(2万1871社)、「千葉銀行」(2万1124社)、「西日本シティ銀行」(福岡県、2万563社)と続く。
トップ10行のうち、福岡銀行は最もメイン社数が増加。また、増加社数が200社を超えたのは福岡銀行のほか、18位の八十二銀行(長野県、1万4291社)、58位の横浜信用金庫(6721社)の計3行庫のみ。
今年1月、第四銀行と北越銀行が経営統合して発足した「第四北越銀行」(新潟県)のメイン企業数は1万7993社(シェア1.24%)で、北陸4県に拠点を置く地方銀行として初めてトップ10入りした。また、5月に経営統合で発足した三十三銀行(三重県、7305社、シェア0.50%)は48位に登場した。
都道府県シェア、最も高いのは長崎県の「十八親和銀行」で84.26%
業態別にみると、シェアが最も高いのは「地方銀行」で40.51%。シェア拡大は12年連続。次いで「信用金庫」(23.39%)が続き、3年連続で拡大。地方銀行と信用金庫を合わせたシェアは全体の3分の2に迫る。
インターネットバンキングなどの「ネット銀行」も、少しずつシェアが拡大している。0.14%で、前年比プラス0.01ポイントとなり、調査当初の2009年(0.01%)から見て、14倍にも拡大した。なかでも、「住信SBIネット銀行」「楽天銀行」などをメインとする企業が増えている。
地域単位・県単位で拠点の集約化が続いている。「農協」(1.23%)や「漁協」(0.08%)でもシェアが拡大。なかでも農協は、2009年からの拡大幅が地方銀行に次いで大きい。
その一方で、3メガバンクを含む「都市銀行」のシェアは19.54%で、前年を0.24ポイント下回り過去最低を更新。「第二地方銀行」(9.67%)は3年連続で1割を下回り、2年ぶりに前年から縮小したほか、シェア低下幅は全業態で最大となった。「信用組合」は2.46%で、2年連続でシェアが低下している。
都道府県別にみると、「東京都」と「大阪府」、「埼玉県」、「愛知県」、「兵庫県」の5都府県で、都市銀行がシェアでトップとなった一方、残りの42道府県では地方銀行・第二地方銀行がトップを占めている。
前年からシェアを拡大させたのは17、低下したのは29。最もシェアが拡大したのは「高知県」の四国銀行(前年比プラス0.45ポイント、シェア50.06%)。最も縮小させたのは「福島県」の東邦銀行(マイナス0.32ポイント、40.38%)となった。
都道府県シェアで最も高いのは「長崎県」の十八親和銀行で、県内シェアはじつに84.26%を占める。2番目に高い「和歌山県」の紀陽銀行(県内シェア63.73%)を20ポイント以上も上回り、1行の単独シェアでは全国的に極めて高い水準にある。
3位以下には、「島根県」の山陰合同銀行(県内シェア61.92%)。「奈良県」の南都銀行(61.50%)、「愛媛県」の伊予銀行(60.34%)と続いた。以上が、単独で県内シェアが6割を超えた5県だ。
経営統合が発表されている青森県の「青森銀行+みちのく」銀行(シェア70.36%)、福井県の「福井銀行+福邦銀行」(55.00%)も含むと、単独で過半数のシェアを有する金融機関がある都道府県は前年より増えて、計22。愛知県では、統合が報じられた愛知銀行と中京銀行(いずれも名古屋市)のシェア合計は約1割にとどまるが、県内シェアでトップの三菱UFJ銀行に次ぐ県内2番手の規模となる。
進む再編、改正金融機能強化法が後押し
コロナ禍の2021年7月に施行された改正金融機能強化法の動向が注目されている。
同法は時限立法ながら、地域金融機関の統合・合併に伴う必要経費を国が一部負担するもので、30億円を上限にシステム統合などによる費用が対象に含まれる。
地域金融機関などの経営統合は、店舗の統廃合などのコスト削減のメリットがある半面、勘定系システムの開発などで多額の費用が生じる。そこで、その負担を国が軽減することで、地銀などの経営統合や合併を進めやすくする狙いがある。
2021年は、1月に新潟県で第四北越銀行が発足したのを皮切りに、5月には三重県で三十三銀行(四日市市)が発足。さらに、5月に青森県の青森銀行とみちのく銀行が、7月に荘内銀行(山形県鶴岡市)と北都銀行(秋田市)を傘下に持つフィデアホールディングス(仙台市)と東北銀行(盛岡市)が、それぞれ経営統合を発表した。10月には、福井銀行が同一県内の福邦銀行を子会社化。12月には、愛知県の愛知銀行と中京銀行が経営統合に向け基本合意したと発表している。
地元企業から資本を募った南日本銀行(鹿児島市)など、経営統合や合併に頼らない生き残り策を講じる地域金融機関がある。
その一方で、福島銀行(福島市、19年11月)、筑邦銀行(福岡県久留米市、20年1月)、清水銀行(静岡市、同2月)、大東銀行(福島県郡山市、同5月)、東和銀行(前橋市、同10月)、仙台銀行ときらやか銀行(山形市)を傘下に持つ、じもとホールディングス(仙台市、同11月)、筑波銀行(茨城県つくば市、21年5月)は、SBIホールディングスと資本・業務提携を結んでいる。また、12月にはSBIHDと新生銀行とのTOB(株式の公開買い付け)が成立。地銀連合と連携した巨大な「第4のメガバンク」構想が進んでいる。
マイナス金利やコロナ禍の影響で厳しい収益環境が続くなか、今後はますます地銀の合従連衡が再加速する可能性がある。
そうしたなか、帝国データバンクは
「コロナ禍で疲弊した中小企業を支えるための資金繰りニーズに加えて、後継者問題やデジタル変革(DX)、脱炭素への取り組みをはじめ、中小企業単独では解決が難しい複雑な経営課題への対応など、新しい企業ニーズを捉えた金融サービスの提供が『メインバンク』として企業から選択される一つの判断材料になりそうだ」
としている。
なお、調査は2021年10月末時点の企業概要データベース「COSMOS2」(約147万社収録、特殊法人・個人事業主含む)をもとに、企業が「メインバンク」と認識する⾦融機関を分析した。⼀企業に複数のメインがあるケースでは、各企業が最上位として認識している⾦融機関をメインバンクとした。この調査は2020年12月に続き13回目。