社長が選ぶ「今年の社長ランキング」 豊田章男氏、孫正義氏に続く「地方発ジャパニーズ・ドリーム」の二人とは?

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   コロナ禍に明けて暮れようとしている2021年。難しい経営の舵取りを迫られた全国の社長サンにとっては大変な1年だった。

   そんな社長サンたちが「あの人のように頑張りたい!」と憧れた経営トップをランキングしたのが、産業能率大学総合研究所が2021年12月15日に発表した「社長が選ぶ 今年の社長2021」だ。

   この調査によると、超ビッグネームの経営者たちのあいだに意外な人物が上位に食い込んでいる。「地方発ジャパニーズ・ドリーム」を実現した、その社長は......。

  • 社会との共存を志向する経営理念に賛同する声が集まった(トヨタ自動車の豊田章男社長。公式サイトより)
    社会との共存を志向する経営理念に賛同する声が集まった(トヨタ自動車の豊田章男社長。公式サイトより)
  • 社会との共存を志向する経営理念に賛同する声が集まった(トヨタ自動車の豊田章男社長。公式サイトより)

人気投票ではない「リアルな社長像」を目指す

   この調査は2008年から毎年実施しており、今回で14回目。J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、産業能率大学マーケティングセンターの担当者にその狙いを聞いた。

   産業能率大学総合研究所は企業の研修プログラムなどを作っており、「社長が選ぶ今年の社長」という企画は、もとは「有名人の中から選ぶ理想の上司像」といったランキングからの流れだったという。担当者はこう語った。

「『理想の上司像』では、女性なら天海祐希さん、男性ならイチローさんといった有名人の人気投票になってしまいます。『理想の社長像』では、もっとリアルな社長像を目指そうと考えました。そこで、全国の社長さんたちが『今年の最優秀社長』を選ぶというコンセプトにしたのです」

   米国のメジャーリーグで、選手間の投票で「年間最優秀選手」を選ぶ方式があるのと発想が似ている。

   今回、インターネットを通じて投票に参加した全国の社長サンは558人だが、内訳をみると、非上場が538人(96%)、従業人100人以下が494人(89%)と、圧倒的に多くが中小企業の経営者だ。担当者はこう続ける。

「自分の経営の参考にしたいという側面よりも、ひたすら星を見上げるような『スゴイなあ』という憧れの気持ちが強いと思います」

   つまり、「社長が憧れる社長」といった趣のランキングなのだ。

   そんな調査で選ばれた2021年の「今年の社長」ダントツ1位は、豊田章男氏(トヨタ自動車社長)だった。昨年に続き2年連続。2位はソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏。こちらは2年連続の2位だ=表参照。

表:「社長が選ぶ今年の社長」トップ10ランキング(産業能率大学総合研究所が作成)
表:「社長が選ぶ今年の社長」トップ10ランキング(産業能率大学総合研究所が作成)

   1位の豊田章男氏は、水素エンジンなど時代の先を見据えた取り組みが高く評価されるとともに、社会との共存を志向する経営理念に賛同する声が集まった。

「時代の先を考えながら、地球環境に取り組む熱意がすごい」(47歳男性、サービス業、群馬県)
「カーボンニュートラル実現に向け、これまでの自動車開発の改革に加え、自動運転などの実証実験を行うウーブンシティを開始するなど先頭に立って走り続けている」(62歳男性、情報通信業、愛知県)
「エコカーの多面展開を実行しており、半導体不足の中でも生産水準を短時間で回復して半期1.5兆円の利益を確保した」(71歳男性、製造業、福井県)
といったスケールの大きい経営手腕を称賛する声が多かった。
「人望も含めてワクワクさせてくれる」というソフトバンクグループの孫正義社長(公式サイトより)
「人望も含めてワクワクさせてくれる」というソフトバンクグループの孫正義社長(公式サイトより)

   2位の孫正義氏も、振れ幅が大きいものの、世界的規模の経営と常に新しいことにチャレンジする姿勢に評価が集まった。

「人望も含めてワクワクさせてくれる」(52歳男性、医療福祉、大阪府)
「自社株買い1兆円にはびっくりした」(36歳女性、教育・学習支援業、高知県)
「物事をグローバルに考えて実行しているところと、幅広い投資戦略がすごい」(64歳男性、卸売・小売業、東京都)

   という。

大手家電を解雇された技術者が活躍するアイリスオーヤマ

アイリスオーヤマの大山晃弘社長(公式サイトより)
アイリスオーヤマの大山晃弘社長(公式サイトより)

   注目されるのが、3位のアイリスオーヤマ(仙台市青葉区)の大山晃弘(おおやま・あきひろ)社長と、4位のワークマン(群馬県伊勢崎市)の小濱英之(こはま・ひでゆき)社長だ。1位、2位の豊田章男氏と孫正義氏が超ビッグ企業トップなのに対し、こちらは地方企業の経営者。しかも、大山晃弘氏と小濱英之氏は2019年以来、ともに3年連続で3位~4位に入っている。

   ユニクロの柳井正氏や、ニトリの似鳥昭雄氏、さらに12月20日に宇宙から帰ってきたスタートトゥデイの前澤友作氏より上位なのだ。2人が中小企業の社長サンたちの「地上の星」になった秘密はどこにあるのか。

   アイリスオーヤマは、仙台市に本拠を置く生活用品の企画、製造、販売会社。2000年代からは家電事業に力を入れ、東芝やシャープ、パナソニックなど大手家電メーカーから整理解雇された優秀な技術者を大量に採用。自社の持つアイデアと彼らの持つノウハウをミックス、次々とアイデア家電を出している。

   毎週「新商品開発会議」が催され、たとえばシャープでエアコンのエキスパートだった元社員は、スマホを使って誰でも簡単に遠隔操作できるエアコンを開発、ヒットさせた。

   大山晃弘氏は創業一族の3代目社長。多くのテレビ番組に積極的にCM攻勢をかけ、自らも盛んにメディアに登場、社名を全国区にした。

   こんな称賛の声が相次いだ。

「大手企業の元社員を働きやすい意見の通りやすい職場環境で、再び生かし利益を上げている」(56歳男性、卸売・小売業、千葉県)
「顧客第一主義の商品開発と好業績を維持していることが素晴らしい」(64歳男性、不動産業、神奈川県)
「面白い商品を多数出し、CMにも力を入れていて素晴らしい」(47歳男性、医療福祉、東京都)

現場作業服を女子のオシャレ着に変えたワークマン

ワークマンの小濱英之社長(公式サイトより)
ワークマンの小濱英之社長(公式サイトより)

   一方のワークマンは、群馬県伊勢崎市に本拠を置く、その名のとおり、工場・土木・建築現場で働くブルーカラー向け作業服と関連用品の専門店だ。現場向け作業服の専門店としては日本最大の売上高を誇り、コストパフォーマンスの高さから「作業服のユニクロ」といわれることもある。

   その高機能で安い作業服や安全靴などがSNSで広がり、登山などのアウトドア用品として活用されたり、オートバイ愛好家に使われたりした。また、厨房用に開発された極めて滑りにくい靴が、安全性に注目した妊婦に売れてニュースになったりもした。

   こうした作業服のブレークに目を付けた小濱英之氏は、2010年代半ばにアウトドアやスポーツでも使えるプライベートブランド商品の開発を始めた。そして現在、一般顧客を対象とした「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」や、オシャレな「#ワークマン女子」などの新業態店をオープン。47都道府県すべてに約880店舗を拡大するほどになっている。

   小濱英之氏には、こんな称賛の声が相次いでいる。

「実用性と機能性にこだわった商品開発をされているが、レディース向けのきれいで使い勝手の良いデザインがあり、店舗数を増やしている」(69歳女性、その他、長野県)
「社員の育成、待遇などで成長を加速させている」(56歳男性、サービス業、東京都)
「コロナ禍でも積極出店、低価格で高品質を維持しているところが素晴らしい」(55歳男性、運輸業、長崎県)

   この二人について、産業能率大学総合研究所の担当者はこう語っている。

「大山さんは盛んにメディアに出られて、経営者としての生きざままで語り、ものすごい勢いで話題になっています。地方のハンディをものともしないところが全国の社長サンの心に響いたと思います。
小濱さんは作業服のイメージを変えた発想が素晴らしい。特にワークマン女子は作業服をオシャレ着にしてしまった。お二人とも地方から全国に進出したジャパニーズ・ドリームを体現されている。豊田さん、孫さんと違って、もっと身近な手が届きそうな星になっています」

   なお、調査は従業員数が6人以上の企業経営者を対象に「今年の最優秀経営者は誰か?」と、その理由を聞いた。12月3~6日に実施。有効回答558人を得た。

(福田和郎)

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