「脱炭素の揺り戻し」などが潮流に
「週刊ダイヤモンド」(2021年12月25日・2022年1月1日合併号)は、「2022総予測」。編集部記者による、日本企業を動かす「8つの潮流」が参考になる。
「脱炭素の揺り戻し」「落ちた邦銀の復権」「半導体欠乏の教訓」「コロナ変異株ショック」「『分厚い中間層』のうそ」「資源高と中国脅威」「デジタル敗戦のリベンジ」「メタバース覇権」の8つだ。
「脱炭素の揺り戻し」では、投資家や金融機関から資金を引き出すためのアピール合戦は「言ったもん勝ち」になっているが、通用しないと見ている。現実との折り合いをつけながら脱炭素は進みそうだ。
「コロナ変異株ショック」では、2022年に日本の製薬業界からコロナ治療薬・ワクチンが実用化される見通しを示している。塩野義製薬が経口治療薬を、塩野義、第一三共、田辺三菱製薬などがワクチンを出す見通しだ。海外メーカーに比べて約1年の遅れがあり、「世界に市場はどの程度残されているのか」という不安視する業界関係者の声を紹介している。
株価・景気・投資、国際、産業・金融、政治・社会・文化とジャンルごとにオーソドックスな予想をまとめている。その中で異彩を放っているのが、「不動産業界インサイダー地下座談会」という記事だ。「五輪後暴落って言ってた人、全員正座して」「20年間でこんなに上がった年は見たことないよ」と、2021年の「爆上げ」不動産相場を語っている。その一方で、「意味不明の価格高騰がヤバイ」とも。
「20業種の天気予報」から気になった見出しをピックアップしよう。航空では「ANAがリストラ断行」、鉄道では「聖域なき『値上げラッシュ』」、自動車では「トヨタとVW優勢、ホンダと日産劣勢 『脱EV』ロケット回復で明暗!」、電機では「東芝と三菱電機の劣勢鮮明に」、銀行では「異例リストラが再編の兆し」などだ。
社会関係では、いくつか興味深いインタビューも。皇室に詳しい小田部雄次・静岡福祉大学名誉教授は、「22年中にも愛子さまの『皇位継承権』問題の議論を始めるべき」と話している。
また、コロナ対策では、日本赤十字社医療センターの出雲雄大・呼吸器内科部長が画期的飲み薬として、米ファイザーの「パクスロビド」を挙げている。ただ、画期的な経口薬が登場しても、併せて感染症法上での分類を「季節性インフルエンザ相当」に変更することもセットで行われなければ意味がないという。現状の扱いでは、院外の薬局でコロナの経口薬を入手することができないからだ。「現状のような厳格な感染対策を社会に強い続けることが最善なのか、見直すべき時が来ているのではないでしょうか」と問題提起している。
同誌も2021年のベスト経済書を挙げている。1位は「監視資本主義」(ショショナ・ズボフ著、東洋経済新報社)、2位は「資本主義だけ残った」(ブランコ・ミラノヴィッチ著、みすず書房)、3位は「デジタル化する新興国」(伊藤亜聖著、中央公論新社)。上位を資本主義のあり方を分析する本が占めた。