賃貸マンションの建設や管理を手がける東建コーポレーションの株価が2021年12月14日、一時前日終値比320円(3.5%高)の9370円まで上昇した。その後も大きくは値崩れしていない。
12月13日に発表した2022年10月期中間連結決算で、経営の2本柱の一つである、不動産賃貸事業の売上高や利益が伸びたことを好感し、さらなる収益拡大を期待する買いが入った。
不動産賃貸事業の「稼ぐ力」に投資家が期待
それでは中間決算の内容を見てみよう。売上高は前年同期比2.3%減の1507億円、営業利益は6.3%増の72億円、最終利益は0.7%減の49億円で、全体としてはさほど好調とはいえない。
しかし、不動産賃貸事業は、売上高が前年同期比5.1%増の971億円、営業利益は27.1%増の66億円と躍進した。管理物件数の増加に伴い、サブリース経営代行システム(一括借り上げ制度)による入居者からの家賃収入や管理料収入が増加したことが寄与した。
また、賃貸建物の中間期末の入居率は98.0%と高水準を確保したことが利益の増加に貢献した。こうした不動産賃貸事業の稼ぐ力に投資家が期待し、株価を押し上げた。
2本柱の一方である建設事業は、売上高が前年同期比13.8%減の524億円、営業利益は26.6%減の36億円にとどまった。国土交通省の新設住宅着工戸数の「貸家」をみると、2016年度の直近ピークからの下落傾向がようやく底を打ちそうな情勢だが、そのような状況の中で、東建コーポの建設事業の売上高を大きく伸ばすのはなかなか難しいようだ。また、木材価格の高止まりが続いていることも利益を圧迫する要因となっている。
その結果、2020年10月中間期に建設事業の営業利益が50億円、不動産賃貸事業は52億円と拮抗していたことに比べて今中間期は先に記したように建設事業36億円、不動産賃貸事業66億円と大きく差がついた。
同業他社との営業人員の確保争い激化か!?
同業他社も不動産事業は好調だ。大東建託の2021年9月中間連結決算によると、不動産事業は売上高が5.6%増、営業利益は29.5%増だった。9月の入居率は居住用で前年同月比1.0ポイント上昇の97.7%、事業用で0.6ポイント上昇の99.1%に上った。11月5日付のSMBC日興証券の大東建託のリポートは「建設の回復はスローも、入居率好調で利益成長が続く」とのタイトルで、「アパート建設受注は弱含みの状況が継続」「不動産事業は高水準の入居率と着実な管理戸数増加により想定以上に好調な状況が継続」と指摘した。
一方、賃貸用のアパート・マンション建築についても回復に向かうとの見方も出ている。先に述べた新設住宅着工戸数(2021年10月分)によると、「貸家」は前年同月比14.5%増の2万9822戸と8か月連続の増加となった。2021年4~10月でみると前年同期比9.4%増の19万9740戸で、2016年度から減り続けた戸数が5年ぶりに反転しそうな勢いだ。
野村証券は12月2日付の大東建託のリポートで「地主のアパート建築意欲の回復と銀行の地主への融資姿勢の緩和」が起きていると指摘した。
大東建託にいえる業界の傾向は、東建コーポにも同様に考えていいだろう。
ただ、建築需要が回復に向かうとみられても、建設事業でカギとなる営業人員の確保争いが起きているとの見方もある。東建コーポにとって「車の両輪」である不動産賃貸事業とともに、建設事業が大きく反転するとまでは見通せないようだ。(ジャーナリスト 済田経夫)