地球環境保全も地域との共生も「おいしい焼酎づくりの源泉」 霧島酒造 代表取締役専務の江夏拓三さんに聞く

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サツマイモ発電の年間発電量は850万kWh

――何度もうまくいかない経験をされても諦めない精神は、どこから生まれるのでしょうか?

江夏さん「それはやっぱり、その人の育った環境でしょう。酒造メーカーは長男と次男さえいればいいということで、私は親から独立してお医者さんにでもなりなさいと言われて、関西に一人で暮らしていたんですよ。一人で寂しかったですね。でも、そういった逆境も長い目で見た場合、人生を乗り切るすごいバイタリティ、エネルギーになる。
なんでこうなったんだろうと悩みながら、映画を見たり、小説を読んだりして毎日を過ごしていましたが、結局、これはどうにかしないといけないということで、半年ぐらい、吉野にある修験道の道場『櫻本坊』へ行きました。般若心経を何百回どころか何千何万回も読むんです。そのことがやっぱり人を変えていくんですね。修行法というのは、集中力とか、発想力をといった力を蓄えます。
私も挫折の連続でしたから、ありとあらゆることをして実行していかないといけないと思っています。今の人はちょっとダメになると、『いやもうダメです』とか、『もうあきらめました』と言いますが、目的を決めたら、それにどういうルートでもいいから進んでいくしかない。だから、社員が壁にぶち当たったら、しっかりとサポートしていきます。焼酎粕の処理を担当するグリーンエネルギー部でも担当者を決めて、その人を中心に周りも一緒になって動かしています」
焼酎粕はすべての工場の合計で1日あたり約850トンにのぼる(写真は、霧島酒造の江夏拓三専務)
焼酎粕はすべての工場の合計で1日あたり約850トンにのぼる(写真は、霧島酒造の江夏拓三専務)

――サツマイモ発電は、どのくらいの発電が可能なのでしょうか。

江夏さん「焼酎を製造する際に出る焼酎粕は、すべての工場の合計で1日あたり約850トン(最大1200トン)、芋の選別時に生じる芋くずは、1日あたり約15トン。焼酎粕と芋くずを細かく破砕し、微生物によってメタン発酵させることで、バイオガスを生成します。そのバイオガスを、焼酎製造工程の燃料や発電に利用しています。
本社工場にメタン発酵槽(バイオリアクター、1基あたり容量280立方メートル)16基と、さつまいも発電用のガス発電設備3台を設置しています。発電機の合計出力は約2MW、年間発電量は850万キロワット時(kWh)で一般家庭2400世帯分に相当します。発電した電力は、九州電力に売電しています。
さらに、さつまいも発電の電力で走る社用車『さつまいもEV e-imo』を4台導入しました。導入したのは本田技研工業株式会社のEV『Honda e』で、さつまいもの『いも』と、電気自動車をイメージさせる『e(電気)』と『mobility(乗り物)』を掛け合わせたネーミングです。さつまいも発電の電力を利用できる普通充電器2基、急速充電器1基、計3基の充電スタンドを本社工場内に設置しました。また、2030年度までに社用車約130台を電動車に替えていく予定です」
霧島酒造の持続可能な焼酎造りを目指すプロジェクト『KIRISHIMA SATSUMAIMO CYCLE~さつまいもを、エネルギーに。~』の展開図
霧島酒造の持続可能な焼酎造りを目指すプロジェクト『KIRISHIMA SATSUMAIMO CYCLE~さつまいもを、エネルギーに。~』の展開図

――このEVも都城市と包括連携協定を締結して災害時の避難所における電源に利用できるよう、取り決めを交わしています。御社は地域と共にあることが重要なのですね。

江夏さん「地域と共にあるという会社として、工場を建てるにしても地域の人にも十分活用してもらうようにしています。霧島裂罅水も自分のところで独占するのではなく、汲みに来た人には無料で提供し、グランドゴルフ場も一般に開放しています」
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