アムールトラの撮影記と100年前の狩猟記が1冊に【12月は、2022年をのぞき見する一冊】

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   2021年も残り1か月を切った。昨年来のコロナ禍でさまざまな活動が「自粛」され、人々は悶々とした生活を送っている。夏に開かれた東京オリンピック・パラリンピックの代表選手や、米大リーグのロサンゼルス・エンゼルス、大谷翔平選手の大活躍に胸が熱くなり、救われた思いだった。

   さて、来る2022年、干支は寅。2月には北京冬季オリンピック・パラリンピックが開かれる。世界は、日本の経済は? 人々の生活は......。12月は、そんな「2022年」や「寅」にまつわる一冊を取り上げたい。

   来年は寅年。虎についての本を探すうちに出会ったのが、本書「タイガの帝王 アムールトラを追う」である。動物写真家の福田俊司さんが、アムールトラを撮影するまでの記録が迫力ある写真とともに収められている。

「タイガの帝王 アムールトラを追う」(福田俊司著)東洋書店
  • トラの美しさに魅かれて……(写真はイメージ)
    トラの美しさに魅かれて……(写真はイメージ)
  • トラの美しさに魅かれて……(写真はイメージ)

偶然の出会いに「なんと美しい生き物だろう」と......

   アムールトラは、世界最大の野生ネコ。しかも最強の陸上肉食獣といわれながら、あまり正確な情報が少ない。1995年、オジロワシの撮影のため、ロシア沿海地方のラゾ自然保護区を訪れた著者の福田俊司さんは偶然、アムールトラに遭遇した。

   運転手が急停車し、「チーグル(トラ)」とつぶやいた。同乗したロシア人研究者らが気付いたのに、福田さんは姿をとらえることができない。5、6メートルに至近距離にいたので、視野に入らなかったのだ。

「むだな肉を削ぎおとした、しなやかな肢体をつつむフサフサした獣毛。黄と漆黒がおりなす縞模様。ピンと張りつめた長い髭......」

   なんと美しい生き物だろう、と感嘆した。わずか2、3分の時間に過ぎなかったが、福田さんの人生に重要な意味をもっていくことを確信したという。この時、カメラ機材一式はトランクに仕舞われていたので、写真を撮ることができなかった。

   アムールトラは北東アジアの食物連鎖の頂点に立つ生き物だ。アムールトラがいるのは、その自然が健康であることの証明になる。日本から飛行機でわずか1時間半の距離に、世界最大の野生ネコを養う健康な自然が残っている、21世紀の奇跡だと思った。

   極東ロシアのフィッシング・ツアーに参加したのがロシアとの出会いだった。自然が残る北の大地に魅せられ、ロシア語を勉強し、伝手を頼って、ロシアの研究所の協力を取り付けた。NHKに千島列島の取材を提案し、探査旅行に同行、特集番組がつくられた。その功績で、ロシア科学アカデミー極東支部海洋生物学研究所名誉会員に任命されて、ロシアのどんな僻地でも取材できるようになった。

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