働く人の待遇向上を目指して――。求人情報サイト「バイトル」などを運営するディップでは、人手不足の解消と、働く人の待遇向上につなげていこうと、「ディップ・インセンティブ・プロジェクト」を、2021年12月10日に開始した。特設サイトを設け、好待遇の求人情報を提供している。
この取り組みがユニークなのは、ディップが働きかけて、顧客企業側に賃上げやワクチン手当などのインセンティブを含めた施策を提案したこと。また、自社のアルバイト従業員にも、約8%の給与引き上げたという。景気回復への道筋にはつながるのだろうか。プロジェクトのねらいについて、広報部の弥陀奈津子(みだ・なつこ)さんに聞いた。
社会的意義への共感、採用力強化&定着率向上への期待
最低賃金は2021年10月の改定で、全国平均で約3%引き上げられた。また、岸田文雄首相は「新しい資本主義」を掲げ、その柱のひとつとされるのが「賃上げ税制」だ。12月10日には、与党の税制調査会が税制改正大綱を発表。企業の賃上げをうながすために、現行制度を見直した。一定の条件などを満たすと、法人税から差し引く控除率を引き上げる構想が進んでいる。
新型コロナウイルス感染症の影響で打撃を受けた経済の活性化に向けた、こうした労働環境の変化は、働く人の待遇向上には欠かせない。しかも現状では、10月の緊急事態宣言の解除以降、多くの企業で人手不足の課題も出ている。そんな背景から、同社では「ディップ・インセンティブ・プロジェクト」を立ち上げたかっこうだ。
特設サイト内には、アルバイト・パート向けの「バイトル」、正社員・契約社員向けの「バイトルNEXT」、専門職向けの「バイトルPRO」、社員・派遣・パート向けの「はたらこねっと」など、同社が運営する各求人サービスへの誘導がある。そして、「インセンティブがあるお仕事」の箇所をクリックすると、好待遇の求人情報をチェックすることができる。
たとえば、「1年以内に賃金アップした求人」、「高収入の求人」(※同社の広告表記規定にもとづく)、「入社祝金や継続勤務ボーナス等を支給する求人」、「ワクチン手当等インセンティブを支給する求人」などが掲載されている。
今回のプロジェクトでは、求人サービスを運営するディップ側が、顧客企業に対して、賃金アップを働きかけたという。そのねらいについて、弥陀さんはこう答えた。
「(今回のプロジェクトは)当社の企業理念『私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる』に基づく、一連の取り組みのひとつとなります。この施策を通じて、有期雇用労働者を中心とする働く方々の待遇向上。そして、すべての方が働きがいを感じ、活気ある日常を過ごせる社会を目指しています」
ディップの呼びかけに、利用している企業の反応はおおむね、
「人件費の増加懸念や社内制度の変更がすぐには難しいなどの声もありましたが、社会的意義への共感に加えて、自社の採用力強化、従業員満足向上による定着率向上への期待の声を多くいただいています」
といったところ。
さらに今回、自社のアルバイト社員にも給与引き上げが実現。弥陀さんは「優秀な人員確保のため、そして本施策を自ら推進していくため」と力を込めた。
なお、ディップではかねてから、有期雇用労働者の待遇向上を目指して、さまざまなキャンペーンを展開してきた。直近では2020年3月、新型コロナウイルス感染症への取り組みとして、感染による休業時の経済支援を実施。2021年7月からは「ワクチンインセンティブプロジェクト」を展開(現在も実施中)、ワクチン手当・ワクチン接種特別休暇・接種した人のシフト優先や時給アップなどの情報を提供している。