2021年も残り1か月を切った。昨年来のコロナ禍でさまざまな活動が「自粛」され、人々は悶々とした生活を送っている。夏に開かれた東京オリンピック・パラリンピックの代表選手や、米大リーグのロサンゼルス・エンゼルス、大谷翔平選手の大活躍に胸が熱くなり、救われた思いだった。
さて、来る2022年、干支は寅。2月には北京冬季オリンピック・パラリンピックが開かれる。世界は、日本の経済は? 人々の生活は......。12月は、そんな「2022年」や「寅」にまつわる一冊を取り上げたい。
来年は寅年。虎は日本に生息しないが、なぜか日本人は虎が大好きだ。そんな虎の生態や虎にまつわる文化、虎の未来について詳しく教えてくれるのが、本書「トラ学のすすめ」だ。読み終えれば、ますます虎への愛が深まることは間違いない。
「トラ学のすすめ」(関啓子著)三冬社
アムールトラはネコ科最大の獰猛で優雅な生きもの
著者の関啓子さんは、1948年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。一橋大学名誉教授であるとともにノンフィクション作家として著作活動も行っている。著書に「アムールトラに魅せられて」「コーカサスと中央アジアの人間形成」「多民族社会を生きる」などがある。
虎の本なので、動物学者かと思ったら、関さんは社会学者だ。副題が「アムールトラが教える地球環境の危機」とある。虎は非常にセンシティブな生き物であり、自然環境との強いつながりのなかで生きている動物であることを強調している。
虎に種類(亜種)があることを御存じだろうか。現在、6亜種が生息している。かつては8亜種が識別され、5亜種が生息しているとされていたが、2004年のDNA鑑定により、インドシナトラとマレートラが区別されたために、現在は6亜種が生息していることになった。
すでに3亜種は、森林の減少、さらには毛皮や骨を得るための乱獲によって姿を消した。6亜種の中で、アムールトラ、ベンガルトラ、インドシナトラ、マレートラの4亜種が、レッドリストの評価で絶滅危惧亜種であり、アモイトラとスマトラトラは近絶滅亜種になっている。いずれも絶滅する可能性があるというのだ。ちなみに上野動物園のトラはスマトラトラで、多摩動物公園のトラはアムールトラだ。そして、本書の主人公はアムールトラ。トラの亜種のなかでもっとも大きく、寒い地域に生息しているのが特徴だ。