オミクロン株より怖い! 英ジョンソン首相を窮地に追い込む「ラストクリスマス」の亡霊(井津川倫子)

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   新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の勢いが止まりません。

   南アフリカで初めて検出されたと報じられてから、わずか2週間足らずで世界各国に拡大。慌てた世界保健機構(WHO)が「前代未聞のスピードで広がっている!」と警告を発しましたが、時すでに遅しで、英国ではオミクロン株による初めての死者が確認されました。

   英ジョンソン首相がさぞや戦々兢々としているかと思いきや、「敵」はオミクロン株ではなく、1年前の「あの出来事」のようです。

  • クリスマスの季節がやって来た!(写真はイメージ)
    クリスマスの季節がやって来た!(写真はイメージ)
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えっ、オミクロン株って入院リスクが高いの?

   いまだ、その実態が不明なオミクロン株。入院率や重症化リスクについて判断をするには「時期尚早」のようで、世界中がニュースに一喜一憂している状況です。一つだけ確実なのは、これまでのどの変異株よりも驚異的なスピードで感染が拡大するということ。WHOが「前代未聞だ」と、警告を発しました。

Omicron spreading at unprecedented rate, the World Health Organization has warned
unprecedented:前代未聞の、未曽有の
(オミクロン株が前代未聞の速さで広がっていると、WHOが警告した:英BBC放送)

   「unprecedented」「前代未聞な」「未曽有の」といった意味で、これまで想定していなかった事態に対して使う表現です。すぐに思い浮かぶのは、トランプ前大統領が政権を握った時、それまでの「常識」を覆す行動の数々に、メディアが「unprecedented!」(前代未聞だ)と大騒ぎしていたことです。

   同じ「unprecedented」(前代未聞)でも、オミクロン株が人々の生活に与えるインパクトはトランプ前大統領とは比べものになりません。英国ではオミクロン株による初めての死者が確認されました。

First UK death recorded with Omicron
(英国で初めてのオミクロン株による死者が報告された:英BBC放送)

   英国では、「2日間で倍」のスピードでオミクロン株の感染が広がっているそうです。感染者数を表す折れ線グラフを見ると、90度の角度で直角に増えていて、オミクロン株の感染スピードが「ハンパない」ことが伝わってきます!

   これまで「オミクロン株は、感染力は強いが重症化リスクは低い」といった「通説」が流れていましたが、ここにきて衝撃のニュースが飛び込んできました。英国同様、猛烈な勢いで感染が拡大しているデンマークでは、「オミクロン株の入院率がデルタ株を上回っている」というのです!

   こうした最新のデータを前に、米国の専門家は「We have learned by now that we underestimate this virus at our peril」(我々は命を犠牲にして、このウイルスを過小評価してしまったことを学んだ)と語っていました。オミクロン株を「重症化リスクが低い」と過小評価することは、命がけのリスクだということが伝わってきます。

英ジョンソン首相を窮地に追い込む「ラストクリスマス」

   オミクロン株は、とりわけ英国やデンマーク、ノルウエーといった国々で爆発的に広がっています。英国では、ジョンソン英首相が「私たちはオミクロン株との戦いで緊急事態に直面している」と強調。3回目のワクチン接種「ブースター接種」をイングランドの全成人に対して「新年まで」に提供すると発表しました。

   デルタ株の感染が収まったとたん、一気に規制解除に踏み切ったジョンソン首相の政治判断に批判が殺到するかと思っていたら、なんとジョンソン首相を窮地に追い込んでいるのはオミクロン株ではなく、昨年12月に開催したクリスマスパーティーでした!

   2020年12月といえば、英国で新型コロナウイルスの感染が収まらず、外出規制が課せられていました。ところが、ジョンソン首相率いる保守党メンバーが、首相官邸でルール破りのクリスマスパーティーを開催していたことが発覚! 政府の言いつけを守って、泣く泣く「家族のクリスマス」をあきらめた人々の逆鱗に触れて、1年前のできごとにも関わらず、国民の怒りが大爆発しているのです。

Total disregard for everyone who was following the rules
(規制に従っていた人々への、完全な裏切り行為だ!)

   当初は、参加を否定していたジョンソン首相でしたが、なんと、サンタの帽子をかぶったり、キラキラ光る飾りを首に巻いたりしたスタッフと一緒に映っている写真を暴露されて大ピンチ! さらに、スタッフが、「パーティーの後は裏口からこっそり帰るように」と指示を出していたメールまで暴露されるなど、すっかり逃げ場を失っている状況です。

Bombshell email: Leave through the back door on the night Boris Johnson hosted a party last Cristmas
(ボリス・ジョンソン主催の昨年のクリスマスパーティーで「裏口から帰れ」の爆弾メール:英紙ミラー)
bombshell:衝撃、爆撃、爆弾

   「ラストクリスマス」といえば、英国歌手ワムの名曲が懐かしいですが、ジョンソン首相にとって「ラストクリスマス」は大変な騒動になってしまったようです。

   それでは、「今週のニュースな英語」は、「bombshell」(衝撃、爆弾)を使った表現です。

News of the bankruptcy comes like a bombshell
(倒産のニュースは、爆弾のように驚かされた)

Your engagement was bombshell announcement
(あなたの婚約は爆弾宣言だった)

That was a bombshell interview
(あれは、驚きのインタビューだったね)

   「bombshell」には「金髪の美女」といったスラングの意味もあるようです。ふさふさの金髪がトレードマークのジョンソン首相ですが、「ラストクリスマス」が自爆への引き金にならないといいですね。(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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