ドラッグストアのスギHDが10か月ぶり安値、店舗網の拡大によるコスト増を嫌気か?

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   ドラッグストア大手、スギホールディングス(HD)の株価が2021年12月9日に一時、前日終値比190円(2.7%)安の6910円まで下がり、約10か月ぶりの安値をつけた。

   新型コロナウイルスに対応したワクチン接種が進んだ8月以降、コロナ後の衛生用品の需要減を織り込み始めた株式市場で下落基調をたどるなか、店舗網を拡大し薬剤師の雇用を増やそうとする戦略がコスト増と受け止められているようだ。

  • スギHD株が10か月ぶりの安値……(写真は、イメージ)
    スギHD株が10か月ぶりの安値……(写真は、イメージ)
  • スギHD株が10か月ぶりの安値……(写真は、イメージ)

業界4位「トータルヘルスケア戦略」を掲げるスギHD

   ここでスギHDの立ち位置を確認しておこう。2021年2月期、3月期のドラッグストア業界の連結売上高ランキングは4位で、5位のマツモトキヨシホールディングス(HD)を上回る堂々の大手チェーンの一角を占める。

   ただ、マツキヨは7位のココカラファインと2021年10月に経営統合し、マツキヨココカラ&カンパニーとなったことで、イオン系のウエルシアホールディングス(HD)に次ぐ2位に浮上。このため、現状ではスギHDは5位に後退している。マツキヨはさらなるM&A(企業の合併・買収)により、規模拡大を目指す戦略を明快にしている。

   スギHDは1976年に愛知県西尾市で「スギ薬局」として創業。地元の東海地方で足場を固めたのちは近畿地方への出店を拡大。近年は首都圏への攻勢を強めている。スギ薬局のほか、ディスカウントドラッグストア「ジャパン」や訪問介護ステーションも展開している。

   「トータルヘルスケア戦略」を掲げ、健康増進から診断、治療、介護、終末期ケアまで対応・支援することを目指している。

   医師の処方箋を薬剤師がチェックして薬を販売する調剤薬局を併設するドラッグストアとして成長してきたのも特徴だ。併設率は8割程度にのぼり、ウエルシアHDとともに業界で最も高い水準にある。一般的に調剤薬局はそれ以外の薬や日用品などを販売する部門より利益率が高いとされており、稼ぐ力の源泉となってきた。

   直近の決算は9月28日発表の2021年8月期中間連結決算。50店舗の新規出店(6店舗閉店し純増は44店舗)により期末店舗数を1435としたことで売上高は前年同期比4.0%増の3149億円と伸びたが、コロナ初期で衛生用品がよく売れた前年の反動減などもあり、最終利益は21.7%減の98億円だった。

政府の「かかりつけ薬局」シフトが追い風

   こうした中で日本経済新聞が11月2日に報じた記事が「5年で4割増2000店へ」。8月末で1435ある店舗数を、年120店程度の出店を続けることで、閉店も踏まえて5年かけて2000店体制にするというものだ。スギHDの特徴である調剤薬局併設型を展開していくことでもある。政府が医療機関近くに調剤薬局を置く従来型の「門前薬局」から、患者中心の「かかりつけ薬局」へのシフトを推進していることも追い風になる。

   半面、薬剤師の争奪戦は激化しつつあり、今後のコスト増要因となるのは確実だ。大和証券は中間決算の時点で「経費抑制も、薬剤師の中途採用などで人件費上振れ、課題残る」と指摘していたが、さらなる人件費増が見えてきたことで、ジワジワと株価が押し下げられているようだ。

   他方、野村証券は11月15日付のリポートで「安定的な集客や顧客ロイヤルティ向上を実現できる調剤事業は中長期的な成長が見込める」と記しており、悲観一色ではない。

   スギHDがいかにして店舗網を拡大し、より業界上位を目指すのか、その手法に市場は目をこらしていると言えそうだ。

(ジャーナリスト 済田経夫)

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