最近趣味で持った一冊「犬の飼い方」
「一冊の中に無限の世界が広がっている。書棚を眺め、一つひとつの本の世界が広がっているのかと想像すると面白いですね」
本に囲まれた空間に心地よさを感じると、直樹さんは言う。
たとえば、最近興味を持った一冊として、「犬の飼い方」(大野淳一著 大泉書店 昭和28年)という本を見せてくれた。
地方に行った際はその土地の古書店に入るようにしている直樹さん。小倉の古書店で目にして、直感的に手に取った一冊だと言う。タイトルどおり、犬の飼い方についての実用書だが、内容は丁寧でやや専門的な内容まで踏み込んでいる。どういう人がこの本を読んだのか、想像しながら直樹さんは読んだそうだ。
こうした、日常のちょっとした古いものに無性に好奇心をくすぐられるという。レジの横には100円を入れると占いの紙が出てくる、今ではあまりみかけない「ルーレット式おみくじ」が置いてある。
「子供の頃このおみくじの仕組みが不思議でしょうがなかったんですよね、最近みつけてつい買ってしまいました」
と笑って話す。
直樹さんは子供のことから神保町に通っている。スピードを緩めずに変化し続けるこの街の様子には、驚かされるばかり。店主の定位置である店の奥の席から見える通りの眺めも、これからますます姿を変えていくだろう。
しかし、日焼けした古めかしい書棚は、創業当時から変わらずにここにある。これからも日常に根付いた心くすぐる品々が少しずつ「大久保書店」の書棚を満たしていきそうである。
(ながさわ とも)