他と一線画す「エンタメSIM」で魅了! 存在感高まるy.u mobileの事業戦略とは?

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   値ごろ感のある格安SIMサービスを手掛ける通信業者、MVNO――。MVNO業界は現在、大手キャリアが価格競争に参入してきたことから、「元気がない」のが実情だ。

   そんななかで、スピード感のある仕掛けを続けているのが、USEN-NEXT HOLDINGSとヤマダホールディングスの合弁会社として設立したY.U-mobile株式会社が提供するMVNOサービス「y.u mobile」である。

   動画配信サービス「U-NEXT」を組み合わせた魅力的なサービスを展開し、「エンタメSIM」として存在感を発揮。料金面でも、2021年秋のプラン料金改定に続き、12月15日には「かけ放題」のプランも値下げする、と発表したばかりだ。

   そんな意欲的な挑戦を続けるy.u mobileの事業戦略やサービス展開について、代表取締役社長の鹿瀬島礼(かせじま・れい)さんに話を聞いた。

Y.U-mobile株式会社代表取締役社長の鹿瀬島礼さん
Y.U-mobile株式会社代表取締役社長の鹿瀬島礼さん

話題の『U-NEXT』付きのプラン――特色あるサービスで差別化

――携帯電話業界を取り巻く、事業環境を教えてください。

鹿瀬島礼さん「ご存じのように菅義偉前首相が、携帯電話料金の引き下げに取り組み、この1年間で、携帯電話料金はずいぶん安くなった印象があるのではないでしょうか。
引き金となったのは、NTTドコモが2021年3月から導入した、オンライン専用プランの『ahamo』。それにともない、他のキャリアやMVNO各社は、新プランの導入や値下げに動きました。私たちも何度か、プランや料金を見直しています。価格競争もあるなかで、MVNO各社はいま、料金面以外でも、MVNOだからこそできる自社の特色を打ち出し、競争を勝ち抜くことが欠かせません」

――y.u mobileでは2021年12月現在、どのようなプランがあるのでしょうか(以下、料金は税込み)。

鹿瀬島さん「1人で使う『シングル』プラン(※1)、家族など4人でシェアして使える『シェア U-NEXT』プラン(※2)、2021年10月に新たに導入した『シングル U-NEXT』プラン(※3)の3本柱で展開しています。
なかでも、他社と一線を画すのは、『U-NEXT』付きのプラン。グループ会社であるU-NEXTが提供する動画配信サービス『U-NEXT』の月額プラン料金(2189円)が含まれています」
y.u mobileは3つのプランを展開(2021年12月現在)
y.u mobileは3つのプランを展開(2021年12月現在)

(※1)2021年10月から、1639円→1070円に値下げ
(※2)2021年10月から、4378円→4170円に値下げ/音声通話SIMカード2枚目無料。3枚目以降およびデータSIM発行の場合は有料
(※3)毎月もらえる1200円分のU-NEXTポイントを使うと、+10GBのチャージが可能

鹿瀬島さん「ちなみに、y.u mobileならではのサービスが、100GBまでを上限に有効期限なしで永久に繰り越せる『永久繰り越しギガ』、年間最大3万円までスマホの修理費用を補償するユーザー負担は0円の『修理費用保険』などで、特色を打ち出しています」
「料金改定は厳しい判断でもあったが、ユーザーの声を積極的に取り入れた」と鹿瀬島さん
「料金改定は厳しい判断でもあったが、ユーザーの声を積極的に取り入れた」と鹿瀬島さん

――以前から『シェア U-NEXT』プランはありましたが、個人向けの『シングル U-NEXT』プランはこの秋、登場したばかりですね。導入の背景を教えてください。

鹿瀬島さん「MVNOの場合、個人(シングル)ユーザーが多い傾向があります。感覚的には8割程度でしょうか。そうした利用状況から、シングルでもU-NEXT付きのプランを出してほしい、という声があがっていたのです。なぜなら、既存の『シェア U-NEXT』プランの場合、たとえば2人で使えば値ごろ感があるものの、1人で使うには絶対額としては4000円を超えてしまい、ユーザーに響かないところも......。秋の改定では、ユーザーの声を参考に、その点を見直しました」

――このプランであれば、いつでも、どこでも、U-NEXTを楽しめます。「エンタメSIM」として、存在感を発揮していきますね。

鹿瀬島さん「とくに『シングル U-NEXT』プランは、手前味噌ですが、映画やドラマ、アニメなどの動画も楽しめて、この価格帯のサービスは画期的。グループ会社の総合力を生かした、魅力的なプランとなりました。こうした強みを生かして、新規ユーザーの獲得につなげられたらと思います。
一方で、2021年12月現在、U-NEXTの会員数は240万人ほどいます。ですので、U-NEXT会員に向けて、『シングル U-NEXT』プランをアピールしていきたい。既存のU-NEXT会員がログイン時に使用する『U-NEXT ID』は、y.u mobileの申し込みやマイページへのログインIDとして共通で使えます。考えようによっては、U-NEXTの月額利用料(2189円)に781円追加するだけで、『シングル U-NEXT』プランを利用できるわけです。おかげさまで10月の登場以来、じわじわと利用者を伸ばしています」

「550円で提供する『10分かけ放題』には訴求力がある」

――さらに、スピード感のある事業展開が続きます。12月15日、国内通話の「10分かけ放題」を月額858円→550円に、「無制限かけ放題」を2970円→1400円に値下げする、と発表がありました(専用アプリから発信)。

鹿瀬島さん「2022年1月分から適用される『かけ放題』の料金に関しては、ようやくユーザーの声をかなえられましたね。正直ベースで話すと、以前の『無制限かけ放題』は他社と比べ、競争力として弱いところがありました......。しかし今回、念願かなって原価を下げることができ、値下げが実現。また、『10分かけ放題』は、すでに競争力のある価格設定でしたが、原価が下がった分、こちらも思い切って値下げしました」
2021年12月15日に発表された「10分かけ放題」「無制限かけ放題」の料金改定
2021年12月15日に発表された「10分かけ放題」「無制限かけ放題」の料金改定

――「10分かけ放題」と「無制限かけ放題」、どちらを選ぶ傾向がありますか?

鹿瀬島さん「『10分かけ放題』を利用するユーザーが多いですね。関連する話として、私たちの独自調査では、通話は7~8分ほどという人も多く、つまり5分では足りないと感じているようです。そうした背景もあり、今回、550円で提供する『10分かけ放題』には訴求力があるのでは、と考えています。
利用したい場合はウェブサイトを通じて申し込むほか、グループ会社である全国のヤマダデンキ店頭に行けば、カウンターがあります。自分での申し込みが不安な場合は、ぜひ店頭へお越しください。
余談ですが、関西の3店舗では、『リモート接客』をテスト的に取り入れました。店頭カウンターにはタブレットを設け、画面を介して、Y.U-mobileの社員が接客するのです。ヤマダデンキの店員はSIMカードの受け渡しなど、最小限の接客にとどまります。新型コロナウイルスの影響下で、ユーザーに寄り添うことを考えて実施しました。が、よしあしあるので、今後の導入は検討中です」

――ユーザーを大事にする姿勢が伝わってきました。最後に、いま注目している携帯電話業界の動向を教えてください。

鹿瀬島さん「2つあります。1つ目は高速通信規格『5G』の動向。サービスの環境が整ってきたら、どのようなサービスを提供できるか含め、関心の高い分野です。2つ目は、スマートフォンなどデバイスに内蔵されている『eSIM』への対応。こちらのほうが、より動きがはやそうです」
「eSIM普及への期待は高い」と鹿瀬島さん
「eSIM普及への期待は高い」と鹿瀬島さん

――eSIMのメリットは、どのような点でしょうか。

鹿瀬島さん「現在、多くの人が使うSIMカードを入れ替える場面は、機種変更やキャリア変更の時。そして、入れ替え自体や、それにともなう設定の変更は、ひと手間かかるものです。一度やっても、忘れてしまう人は多いのではないでしょうか。しかし、eSIMであれば、契約の手続きなどが簡単になると思います。
別の言い方をすると、事業者にとっては、魅力のないサービスを提供したらユーザーに見切られてしまいます。一方で、優れたサービスを提供していたら、すぐに乗り換えてもらえる。それがMVNO業界の活性化にもなりますし、私たちの強みも生かせるのではと期待しています。
こうした先行きを見据えつつ、ユーザーの声も取り入れ、特色あるサービスをこれからも提供し続けていきたい。いまも『価格.com』では人気ランキングの上位につけていますが、最も選ばれるMVNOサービスとして、知名度も高められたらと思っています」

(会社ウォッチ編集部)

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