「カットイン」成功企業がやってる「こんな手法」! 重要なのは「リアル」とはひと味違うコンテンツづくり(藤崎健一)

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   営業のオンライン化で難しくなった、相手との距離を縮める上手なカットインを実践している企業事例を、今回も紹介します。

   海外での事業展開や事業の拡大、あるいは海外での資産運用情報を提供するB社の事例です。ターゲットは投資意欲旺盛な中小企業オーナーや資産を継承する富裕層などです。B社は従来、展示会への出展とリアルでのセミナーを開催し、見込ありそうなお客様へ営業が直接接触を試みていました。

   しかし、コロナ禍になり展示会は軒並み中止。セミナーも開催できなくなりました。そこでやむなく取った策は、すべてのセミナーを「オンライン化」するという苦肉の決断でした。

  • すべてのセミナーをオンライン化してみたら……(写真はイメージ)
    すべてのセミナーをオンライン化してみたら……(写真はイメージ)
  • すべてのセミナーをオンライン化してみたら……(写真はイメージ)

相談窓口で「疑問」に答えてあげる

   B社は考えました。単にリアルのセミナーをオンライン化したのでは、自社の持つ魅力の半減であり、何かリアル開催にはないメリットをターゲットに提供できないものか。

   考えついたのは、セミナー内容をすべて動画収録して、開催日に放映するだけでなく後日ホームページで公開することで、セミナー開催日に参加できかった人たちも閲覧できるように工夫することでした。

   同時にセミナーで使った資料は、お役立ち資料としてホームページからダウンロードできるようにもしました。

   しかし、セミナー動画を見て資料をダウンロードできるだけでは営業チャンスに乏しいので、なにかいい手立てはないものか考えました。

   リアルのセミナーでは、セミナーへ参加した方には自分が足を運んで参加したという意識が強いので、それが冷めないうちに電話連絡して営業の糸口をつくることが可能でしたが、あくまでWEBセミナーや事後の動画を見たというだけの人に、そこまで参加意識の熱量はないので、いきなり電話をするのはハードルが高いです。かといって御礼メールを送信したところで、返信は期待できません。

   ならばと、動画を視聴した人や資料ダウンロードした人に、その疑問点や不明点を気軽に問いかけできる相談窓口を設置することにしました。富裕層向けの情報は世に出回っている絶対量が少ないので、押し付けがましくない窓口があれば、詳しい情報が欲しい人は多いと考え気軽に問いかけできる体制をつくったのです。

アンケート調査の真の狙いは......

   結果はすこぶる良好。リアル開催ではその後の関係づくりがしにくかったセミナー当日の都合が付かなかった方や、開催後にセミナーを知った方とも接触することができ、オンラインでの個別相談窓口には思いのほか多くの問い合わせをもらうことができ、営業のチャンスが従来以上に広がることになったのです。

   従来のリアル開催セミナーを、セミナー、動画配信、資料ダウンロードと、複数をコンテンツ化することで、1粒を3粒分の情報に転化させ、ビジネスチャンスを広げたといえます。

   しかも限られたセミナー参加者だけをターゲットとするのではなく、誰でも、いつでも、どこからでも情報にアクセスできるようにして、接触量を上げ営業機会を増やすことができた好事例なのです。ちなみに、これを機にB社では、対面営業よりも非対面営業活動のほうが多くなっています。

   事例をもう一件ご紹介しましょう。セキュリティ商材を小規模事業者へ販売しているC社の事例です。会社の財産である顧客情報や製品開発情報などの漏洩や改ざん、ウイルス感染を心配する小規模事業者の社長が営業ターゲットです。

   営業オンライン化での課題は、お悩みを教えてくれるようになるほどにまで懐に入り込むことが、なかなか容易ではないことでした。そこで同社ではWebセキュリティに関して、小規模事業者の社長宛にアンケート調査を行うことにしました。

   つまり、多くの会社からアンケートをとって、それを集計してオリジナルの有益情報を作り上げようと考えたのです。

   しかし、真の目的は調査をまとめることではなく、「集計結果をお教えしますから、アンケートにご協力ください」と話しかけて、ターゲットの状況を把握することにあります。

   規模の大小を問わず、経営者ともなれば同業他社、あるいは同規模の会社が会社運営において、どのような策を講じているかは確実に興味があることです。調査結果提供を条件にこちらが知りたいことを聞き出してやろう、というわけなのです。「ヒアリング」を兼ねた「カットイン」活動とも言えるでしょう。

調査と集計、結果報告の提供を繰り返す

   調査のテーマや切り口を変えてアンケートを何回か実施し、集計結果の提供を繰り返すことで、ターゲットとの距離感は確実に縮まってきます。また、調査する会社サイドはヒアリングする都度、お客様の状況把握ができるので、今が売り込み時期というタイミングが必ず出てきます。そこを逃さず、「アンケート回答にあったご心配事の解決策について情報交換させてもらえませんか?」と、ニーズにあった商談機会につなげることができるようになります。

   こうした結果C社は、1年間でターゲット企業約4500社のうち約2000社の状況把握ができ、さらにそのうちの500社程度と商談機会を作ることに成功しました。もちろん、残りの1500社は今後ニーズをとらえ次第、商談に持ち込む予定です。

   今回は、オンライン営業における商談につなげる「カットイン」事例についてご紹介しました。対面を前提としないオンライン営業では、対面のとき以上に複数回の接触機会をつくり出して親近感や信頼感の糸口をつかむことが重要です。そのためには、リアル営業とはひと味違う「予備調査」を駆使したコンテンツづくりが大事なポイントになってくるといえるでしょう。(藤崎健一)

大関 暁夫(おおぜき・あけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役 企業アナリスト
東北大学経済学部(企業戦略論専攻)卒。1984年、横浜銀行に入行。現場業務および現場指導のほか、出向による新聞記者経験を含めプレス、マーケティング畑を歴任。全国銀行協会出向時には対大蔵省(当時)、対自民党のフロントマンも務めた。中央林間支店長に従事した後、2006年に独立。銀行で培った都市銀行に打ち勝つ独自の営業理論を軸に、主に地域金融機関、上場企業、ベンチャー企業のマネジメント支援および現場指導を実践している。
メディアで数多くの執筆を担当。現在、J-CAST 会社ウォッチ、ITメディア、BLOGOS、AllAboutで、マネジメント記事を連載中。
1959年生まれ。
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