上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、東京・南青山に本社を置くホンダこと本田技研工業です。
ホンダは1946年、本田宗一郎氏によって本田技術研究所として創設されました。社業のはじめは二輪車で、名車スーパーカブは世界で最も多く製造されたオートバイです。四輪車への進出は意外に遅く、1963年のことです。
コロナ禍で営業利益が大きく落ち込む
それではまず、ホンダの近年の業績(IFRS)の推移を見てみましょう。
2017年3月期に8407億円あった営業利益は、2020年3月期には6336億円へと落ち込み、営業利益率は6.0%から4.2%に悪化しています。
2021年3月期には営業利益額、営業利益率ともに前期比で改善していますが、売上収益は13兆1705億円と、直近5期間でもっとも低くなっています。
2022年3月期の中間決算では、売上収益が前年同期比21.0%増、営業利益が161.2%増と大きく改善しています。特に営業利益については、半導体を含む部品供給不足や原材料価格高騰の悪影響はあったものの、販売台数の増加やコストダウン効果、為替の影響などにより大幅増益となっています。
ただし2022年3月期の期末予想は、売上収益が前期比10.9%増の14.6兆円と増収になるものの、営業利益は前年同期比並みの6600億円の見込みにとどまっています。
セグメント別利益は「金融サービス事業」がトップの怪
次に、ホンダのセグメント別の業績を見てみましょう。ホンダには「二輪事業」「四輪事業」「金融サービス事業」「ライフクリエーション事業及びその他の事業(その他事業)」の、4つの事業セグメントがあります。
セグメント別の外部顧客への売上収益構成比(2021年3月期)は、四輪事業が8兆5672億円で65.0%と大半を占め、次いで金融サービス事業が2兆4942億円で18.9%、二輪事業が1兆7872億円で13.6%、その他事業が3217億円で2.4%となっています。
同じ期の営業利益は、金融サービス事業が3569億円と最も多く、二輪事業の2246億円や四輪事業の902億円を上回っています。その他事業は116億円の赤字で、航空機および航空機エンジンの赤字によるものが大きいです。
営業利益率は、金融サービス事業が14.3%、二輪事業が12.6%であるのに対し、売上収益トップで主力の四輪事業は1.05%とかなり低く、他の事業の後塵を拝しています。
なお、ホンダの金融サービス事業は、製品販売のサポートを主な目的として、金融子会社を通じて顧客および販売店に対する金融サービスを提供するもの。利益率が高いといっても、この事業だけで拡大することはできません。
競合他社より高い平均年齢をどう下げる
最後に、ホンダ(単体)の平均年齢/平均勤続年数/平均年間給与の推移を見てみましょう。
ここ5期の平均年間給与は、2019年3月の819.8万円をピークに、2021年3月期には798.9万円と、2期で20.9万円も減っています。
これは2021年3月期に、ホンダと本田技術研究所の四輪商品開発機能を統合したことや、ホンダエンジニアリングを本体に吸収合併したことにより、単体の従業員数が約4割増えて、平均年齢が下がった影響と見られます。
セグメント別の従業員数は、四輪事業が15.3万人で72.6%を占めていますが、前述のとおり主力事業から思うように利益が生み出せていません。
国内競合他社の従業員の平均年齢(2021年3月期)は、トヨタ自動車が40.0歳、日産自動車が41.6歳、マツダが41.5歳。ホンダの約45歳はかなり高めで、競合並みに下げるためには、あと5歳は若返りをしなければなりません。
2021年8月23日のダイヤモンド・オンラインは、4月に募集をかけた「早期退職プログラム」に、55歳から64歳未満の日本の正社員2000人もの社員が殺到した、と報じていますが、これで主力事業のコスト構造を見直すことができるでしょうか。(こたつ経営研究所)