新型コロナウイルスの感染拡大は、経済や雇用だけではなく、さまざまな面で大きな影響を与えている。その一つとして、国際的な課題を検討する国際会議の開催も大きな影響を受けた。
政府観光局は2021年12月2日、20年の国際会議統計を発表した。それによると、20年に日本で開催された国際会議の参加者総数は前年比95%減の9万6271人で、このうち外国人参加者数はわずかに6603人にとどまった。
国際会議の外国人参加者数、2020年は過去最低
この調査でいう国際会議は、国際機関・国際団体(各国支部を含む)または国家機関・公共的な国内団体の主催する会議で、参加者総数が50人以上で、日本を含む3か国・地域以上の参加国があり、1日以上の開催をいう。政府観光局の現行基準では、2020年は過去最低となった。
なにしろ、インバウンド需要とも相まって、日本での国際会議開催は増加の一途を辿り、参加者総数は2014年に199万5336人(うち外国人は17万8733人)とピークをつけた後も、高水準で推移。19年には199万3790人(同21万3394人)の参加者を集めていた=表1参照。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大防止による水際対策の強化で、大規模な国際会議の開催が困難になったうえ、外国人の会議参加も入国困難から大幅に減少した。
2020年に開催された国際会議は、前年比94%減の222件しかなかった。国際会議のうち、 外国人参加者数50人以上、かつ参加者総数300人以上の「中・大型国際会議」は前年比97%減のわずか13件とどまった>=表2参照。
こうした国際会議の開催が減少する中で増加したのが、オンライン手法などの活用により、新たにリモート会議を導入する動きだ。
全国から提出された会議のうち、すべての基準を満たしてはいないものの、定量面のみ基準値以上の報告があった、政府観光局の現行基準外のリモート会議が5月以降に増加。前述の222件の国際会議にこれを加えると、900件の会議が開催されたことになる。
この900 件の月別開催状況を見ると、基準を満たす会議222件のうち、95%が1月(94件)と2月(117件)に開催されている。その後、中止や延期を余儀なくされ3月に激減したものの、5月以降は開催形態が徐々にリモートへシフトしている。
基準外会議は、5月に20件が開催されて以降、増加の一途を辿り、9月150件、10月104件、11月138件と100件以上の会議が開催されている=表3参照。
それでも、2020年に開催された会議は900件にとどまっており、前年の3621件には遠く及ばない。新型コロナウイルスの感染拡大によって、国際会議の開催が困難になったことがうかがえる。
国際会議が開催された都市別の外国人参加者数では、東京都(23区)が最も多かったが、その人数はわずか1620人と前年の4万2398人の約4%にとどまった。次いで多かったのが北九州市の1083人で、前年の7947人の約13%、第3位の京都市は562人と同3万585人の約0.1%まで激減した。
政府観光局の現行基準での国際会議の開催件数222件のうち、中・大型国際会議はわずか13件だったが、外国人参加者数の約4割が中・大型国際会議への参加者だったことを見ると、中・大型国際会議の減少が、外国人参加者数の減少につながったことは明らかだ。
国際会議の開催件数の減少が与える影響は、外国人参加者の減少による観光収入などの減少だけではない。現在でも国内では大型の国際会議場建設計画がある。特に、カジノ開設に当たっては、付属して大型国際会議場の開設が前提となっている。
このため、いつまで続くか不透明なコロナ禍の影響と、それに伴う国際会議開催の減少は、カジノ開設という新たな日本の観光誘致策へも大きな影響を与えかねない。
(鷲尾香一)